「じゃあ、おばさん、俺さっそく着替えとか持ってくるよ。」
葵くんはそう言って立ち上がった。
あれ?
立ち上がった葵くんは予想以上に身長が高くて、私の頭の遥か上に顔があったので驚いた。
驚きのあまり、リビングの入り口に立ったままボーッとしている私の横を通って玄関に向かうが、途中、私の頭に手を置いて
「今なら喜んで王子役やるけど?あハハッ。」
と、揶揄うような笑みを向けてすれ違うと玄関に向かい靴を履いて出て行った。
「あっ…葵くんのバカっ!!!!」
忘れていた黒歴史が鮮明に蘇ってきた。
当時、白雪姫ごっこに夢中だった私はしょっちゅう姉と葵くんを巻き込んで白雪姫になりきっていた。毒林檎を食べて倒れるシーンは天才子役並みだったかもしれない。ある日、パパと姉は習い事で家にいなかったので葵くんと2人で留守番をしながら白雪姫ごっこをしていた。どうしても物語りを再現したくてソファーの周りにぬいぐるみを7個並べて7人の小人に見立て、ソファーに横になると王子様役の葵くんにキスをするように迫ったのだった。
当然、恋愛感情が込められたキスではなく、私の中では完全に白雪姫の世界にどっぷり浸かりきっていたので物語の再現一つに過ぎなかった。葵くんだってきっと恋愛的な意味は全くない。私のわがままに付き合ってくれただけなのだ。しかし、残念な事にその時のキスはお互いにとってファーストキスになってしまったのだ。
「さーて!今日は葵くんがいるからハンバーグでも作ろうかしら。」
そう言って母は夕飯の支度をする為にキッチンへこもってしまったので、仕方なく葵くんが使えるように自分の部屋を片付けて姉の部屋と向かった。姉が使用しているベッドは下がソファになる2段ベッドタイプなので、部屋に行くと私が寝られるようにソファーからベッドへとフォームチェンジをしていた。
「数年ぶりで葵くんに会ったけど、背が高くなったよねー!やっぱ、男子の成長は高校生くらいが一番伸びんのかねぇー。」
姉も葵くんの成長っぷりには驚いたようだった。
「そうだねー、めっちゃ背が伸びててわたしも驚いちゃった!」
さっきまではソファーの形をしていたベッドに腰をかけると姉がニヤニヤしながらこちらを見ている。
「…で?王子様との久々の再会はどうなのよぉー!」
姉の質問にドキッとする。幼い頃にごっこ遊びとはいえ私たちが本当にキスをしてしまったことを姉は知っているのだろうか…。
「どうなのって、どうもないよ。王子様だって遊びの中の話だし…。おっ、お姉ちゃんこそどうなの?さっきイケメンに育って嬉しいって言ってたじゃない!」
成長した葵くんは姉の好みからは遠く外れてはいないと思うのだが…。
「イケメンはイケメンなんだけどねー。私、基本年下NGなんだよねー(笑)それに彼氏いるし。あんたに譲るよ。」
と言って、姉はスマホをカバンから取り出すと、先月から付き合い始めたと写真を見せてくれた。
「えっ!めっちゃかっこいいじゃん!大学の人??お母さんには話したの??」
いつも冗談で彼氏できたと推しのアイドルの画像を見せるので、またそのノリかと思ったのだが、どうやら本物の恋人ができたようだ。
「お母さんには言ったけど、お父さんにはまだ…。ほら、なんかめんどくさそうだし…。夏から始めたホテルの花屋のバイトで知り合ったの。」
彼氏との写真を見ながらにやける姉はとても可愛らしいかった。
葵くんはそう言って立ち上がった。
あれ?
立ち上がった葵くんは予想以上に身長が高くて、私の頭の遥か上に顔があったので驚いた。
驚きのあまり、リビングの入り口に立ったままボーッとしている私の横を通って玄関に向かうが、途中、私の頭に手を置いて
「今なら喜んで王子役やるけど?あハハッ。」
と、揶揄うような笑みを向けてすれ違うと玄関に向かい靴を履いて出て行った。
「あっ…葵くんのバカっ!!!!」
忘れていた黒歴史が鮮明に蘇ってきた。
当時、白雪姫ごっこに夢中だった私はしょっちゅう姉と葵くんを巻き込んで白雪姫になりきっていた。毒林檎を食べて倒れるシーンは天才子役並みだったかもしれない。ある日、パパと姉は習い事で家にいなかったので葵くんと2人で留守番をしながら白雪姫ごっこをしていた。どうしても物語りを再現したくてソファーの周りにぬいぐるみを7個並べて7人の小人に見立て、ソファーに横になると王子様役の葵くんにキスをするように迫ったのだった。
当然、恋愛感情が込められたキスではなく、私の中では完全に白雪姫の世界にどっぷり浸かりきっていたので物語の再現一つに過ぎなかった。葵くんだってきっと恋愛的な意味は全くない。私のわがままに付き合ってくれただけなのだ。しかし、残念な事にその時のキスはお互いにとってファーストキスになってしまったのだ。
「さーて!今日は葵くんがいるからハンバーグでも作ろうかしら。」
そう言って母は夕飯の支度をする為にキッチンへこもってしまったので、仕方なく葵くんが使えるように自分の部屋を片付けて姉の部屋と向かった。姉が使用しているベッドは下がソファになる2段ベッドタイプなので、部屋に行くと私が寝られるようにソファーからベッドへとフォームチェンジをしていた。
「数年ぶりで葵くんに会ったけど、背が高くなったよねー!やっぱ、男子の成長は高校生くらいが一番伸びんのかねぇー。」
姉も葵くんの成長っぷりには驚いたようだった。
「そうだねー、めっちゃ背が伸びててわたしも驚いちゃった!」
さっきまではソファーの形をしていたベッドに腰をかけると姉がニヤニヤしながらこちらを見ている。
「…で?王子様との久々の再会はどうなのよぉー!」
姉の質問にドキッとする。幼い頃にごっこ遊びとはいえ私たちが本当にキスをしてしまったことを姉は知っているのだろうか…。
「どうなのって、どうもないよ。王子様だって遊びの中の話だし…。おっ、お姉ちゃんこそどうなの?さっきイケメンに育って嬉しいって言ってたじゃない!」
成長した葵くんは姉の好みからは遠く外れてはいないと思うのだが…。
「イケメンはイケメンなんだけどねー。私、基本年下NGなんだよねー(笑)それに彼氏いるし。あんたに譲るよ。」
と言って、姉はスマホをカバンから取り出すと、先月から付き合い始めたと写真を見せてくれた。
「えっ!めっちゃかっこいいじゃん!大学の人??お母さんには話したの??」
いつも冗談で彼氏できたと推しのアイドルの画像を見せるので、またそのノリかと思ったのだが、どうやら本物の恋人ができたようだ。
「お母さんには言ったけど、お父さんにはまだ…。ほら、なんかめんどくさそうだし…。夏から始めたホテルの花屋のバイトで知り合ったの。」
彼氏との写真を見ながらにやける姉はとても可愛らしいかった。