「おはよう。」
次の日の朝、電車で本を読んでいると磐田君が声をかけてくれた。『おはよう。』とたった一言の挨拶なのに相変わらず姿勢や仕草が綺麗だった。
「おはよう。昨日は心配してくれて色々ありがとう。」
呼んでいた本に指を挟んて閉じ、軽く頭をさげた。
「気にしないで、僕も勘違いしてたし…。今日は何を読んでいるの?」
チラッと本の表示をのぞこうとしたがブックカバーをしているせいで作者もタイトルが見えないでいた。
「今日は姉が進めてくれたエッセイ。この本なら泣いてしまう要素がないからって…。」
昨日母と姉に大笑いされた後、姉は自分の部屋へ行き読み終えた本の中から涙の出ない本を数冊貸してくれた。
姉も本が好きで子どもの頃は二人で一緒に図書館へ通っていた。もしかすると私の本好きは姉の影響なのかもしれない。
「泣きそうになったらいつでも呼んでって思っていたけど、今日は俺の出番はなさそうだね。」
と優しく微笑んでくれた。だけど少しだけ寂しそうに感じた。昨日、会ったばかりで共通の話題もなく、少しの間ガタンガタンと電車の揺れる音だけが響いていた。
せっかく声を掛けてくれたのに…。なにか話をしなくちゃ…。
彼を目の前にすると何故か緊張してしまい天気の話題しか浮かんでこなかったのだが、思い切って話をしてみた。
「きょっ…きょうも寒いね…。」
一言目が裏返ってしまって恥ずかしい。耳まで赤く染まってしまった。
「そうだね。今年一番の冷え込みだって天気予報で言ってたよ。手袋してないの?」
私の手元をみて磐田君が言った。
「あぁ、本を読むのに邪魔だからいつもつけてないの。」
「そうなんだ。じゃぁ、俺の貸してあげるよ。」
そう言うと、自分の手から手袋を外して私のてにはめてくれた。ずっと磐田君の手に付けられていた手袋は彼の体温が浸透してとても暖かかった。
「部活は毎日あるの?」
部活で使う袴などが入っているのだろうか?磐田君が持っている大荷物に目にはいったので聞いてみた。
「来週からテスト期間に入るから今週までは毎日あるかな…。」
乗り換えの駅に着いたので、二人で一緒に電車を降りて次に乗る電車のホームへと歩いていると後ろから磐田君を呼ぶ女の子の声がした。
「耕史せんぱーい!」
明らかに語尾にハートマークが大量についていそうな可愛らしい声で呼び止める。
「…あ、松田か。」
磐田君は振り返るとボソっと名前を呼んだ彼女の名前が口からこぼれた。
「先輩、この時間の電車だったんですね!愛理荷物持つのお手伝いしますよ!」
「今日は袴だけだから大丈夫。松田ありがとう。」
立ち去るタイミングを逃したので二人の会話が終わるのを磐田君の横で待っていると私の存在に気づいた彼女が磐田君に尋ねた。
「先輩、この人誰ですか?」
不審者を見るように見つめた。
「彼女は昨日知り合ったんだ子なんだ。俺の勘違いでちょっと迷惑かけちゃって…。」
「やだっ、迷惑かけただなんて…。迷惑かけちゃったのは私のほうだし…。」
「ふーーーん。」
二人でもじもじとしていると、
「その制服、桜ケ丘ですよね?次のホームで電車反対方向ですね。先輩、学校まで一緒に行きましょ!」
「えっ?あぁ…。じゃぁ、奈々ちゃん、またね!」
磐田君は後輩の女の子に腕を掴まれ連れていかれてしまった。
次の日の朝、電車で本を読んでいると磐田君が声をかけてくれた。『おはよう。』とたった一言の挨拶なのに相変わらず姿勢や仕草が綺麗だった。
「おはよう。昨日は心配してくれて色々ありがとう。」
呼んでいた本に指を挟んて閉じ、軽く頭をさげた。
「気にしないで、僕も勘違いしてたし…。今日は何を読んでいるの?」
チラッと本の表示をのぞこうとしたがブックカバーをしているせいで作者もタイトルが見えないでいた。
「今日は姉が進めてくれたエッセイ。この本なら泣いてしまう要素がないからって…。」
昨日母と姉に大笑いされた後、姉は自分の部屋へ行き読み終えた本の中から涙の出ない本を数冊貸してくれた。
姉も本が好きで子どもの頃は二人で一緒に図書館へ通っていた。もしかすると私の本好きは姉の影響なのかもしれない。
「泣きそうになったらいつでも呼んでって思っていたけど、今日は俺の出番はなさそうだね。」
と優しく微笑んでくれた。だけど少しだけ寂しそうに感じた。昨日、会ったばかりで共通の話題もなく、少しの間ガタンガタンと電車の揺れる音だけが響いていた。
せっかく声を掛けてくれたのに…。なにか話をしなくちゃ…。
彼を目の前にすると何故か緊張してしまい天気の話題しか浮かんでこなかったのだが、思い切って話をしてみた。
「きょっ…きょうも寒いね…。」
一言目が裏返ってしまって恥ずかしい。耳まで赤く染まってしまった。
「そうだね。今年一番の冷え込みだって天気予報で言ってたよ。手袋してないの?」
私の手元をみて磐田君が言った。
「あぁ、本を読むのに邪魔だからいつもつけてないの。」
「そうなんだ。じゃぁ、俺の貸してあげるよ。」
そう言うと、自分の手から手袋を外して私のてにはめてくれた。ずっと磐田君の手に付けられていた手袋は彼の体温が浸透してとても暖かかった。
「部活は毎日あるの?」
部活で使う袴などが入っているのだろうか?磐田君が持っている大荷物に目にはいったので聞いてみた。
「来週からテスト期間に入るから今週までは毎日あるかな…。」
乗り換えの駅に着いたので、二人で一緒に電車を降りて次に乗る電車のホームへと歩いていると後ろから磐田君を呼ぶ女の子の声がした。
「耕史せんぱーい!」
明らかに語尾にハートマークが大量についていそうな可愛らしい声で呼び止める。
「…あ、松田か。」
磐田君は振り返るとボソっと名前を呼んだ彼女の名前が口からこぼれた。
「先輩、この時間の電車だったんですね!愛理荷物持つのお手伝いしますよ!」
「今日は袴だけだから大丈夫。松田ありがとう。」
立ち去るタイミングを逃したので二人の会話が終わるのを磐田君の横で待っていると私の存在に気づいた彼女が磐田君に尋ねた。
「先輩、この人誰ですか?」
不審者を見るように見つめた。
「彼女は昨日知り合ったんだ子なんだ。俺の勘違いでちょっと迷惑かけちゃって…。」
「やだっ、迷惑かけただなんて…。迷惑かけちゃったのは私のほうだし…。」
「ふーーーん。」
二人でもじもじとしていると、
「その制服、桜ケ丘ですよね?次のホームで電車反対方向ですね。先輩、学校まで一緒に行きましょ!」
「えっ?あぁ…。じゃぁ、奈々ちゃん、またね!」
磐田君は後輩の女の子に腕を掴まれ連れていかれてしまった。