ある日の夜、タロウさんのお店。
「一緒に…住む…か。」
お兄ちゃんの提案を孝幸に話した。
何て言われるのかドキドキと
ちょっとの不安。
「瞳は、どうしたい?」
予想外の質問に、ちょっと慌てた。
だって、孝幸がどう思うかとかが気になって自分の気持ちまで考えてなかった。
「私は…―――」
「なぁ、瞳。もしかして俺がどんな風に思うかずっと、悩んでたんだろ?」
昔っから、孝幸は私が思ってること、みんな分かっちゃうんだね…
「だってあの時、孝幸の気持ち…受け入れられなかったから…。それで、お兄ちゃんにこうやって言われて。」
あの時って言うのは…
実は、一度孝幸に一緒に暮らそうと言われた事があった。
お父さんとお母さんが亡くなって、私がひとりぼっちの家に帰って、悲しくて寂しくて、泣いて孝幸に電話したとき。
『俺のとこにくるか?瞳…』
だけど、その時は断った。
何故かって。
このひとりぼっちの家だけど、お父さんとお母さんとのあったかい思い出が詰まってる一つの家。
そんな大切な家を私が守らなくちゃいけないって。思ったから…。
あの時、孝幸がそう言ってくれてすごく嬉しかった。なのに、断ってしまって、
今度はお兄ちゃんと暮らすという事で、悩んでる。
俺より兄貴を選ぶのかって思われたら…


