星と月と恋の話

そんな結月君に比べて、私と来たら。

「星ちゃーん、迎えに来たよ〜」

まだ集計作業の真っ最中なのに。

本番を終えた真菜と海咲が、私を連れ出す為に迎えに来た。

あぁ…今大変なところなのに。

計4回のステージ発表が終わり、いよいよ最終的な集計を出そうとしていたところ。

ここからが一番大変だ、ってときに。

普段なら、こんなタイミングに誰かが迎えに来てくれたら。

「やった、助け舟!」とか思ってたんだろうけど。

私にとって助け舟でも、結月君にとっては泥舟じゃん。

ただでさえ人手が足りてないのに、こんな重要なタイミングで私が抜けちゃって。

そりゃ私なんて、結月君に比べたら、大した戦力にはなってないのかもしれないけど。

私だけ逃げ出すみたいで、凄く感じ悪いよね。

「あ、真菜…。もうちょっと待って。今忙しいところで…」

と、私は言いかけたけれど。

「えぇ?だって、今すぐ行かなきゃ軽音部のライブ終わっちゃうよ?」

「そうそう。もうラストスパートなんだからさ。急がないと」

事情を知らない真菜と海咲は、何の悪意もなくそう言って私を急かす。

去年までの私だったら、何も考えず、二人についていったんだろうな。

でも今年は、私も結月君みたいに。

ちゃんと自分の役目をきちんと果たして…。

…しかし。

「大丈夫ですよ、ここは」

結月君は相変わらずそう言う。

「行ってきてください」

「でも…ここからが大変なのに」

「大丈夫です。のんびりやってますから。星ちゃんさんも、のんびりしてきてください」

…のんびりやるなんて、嘘ばっかり。

結月君のことだから、少しもペースをゆるめることなく、テキパキやっちゃうんでしょ。

やっぱり手伝う、と言いたかったが。

「ほらほら、三珠クンもこう言ってるんだしさぁ」

海咲が、そう言って私を立たせた。

更に、真菜も。

「アンケートの集計なんて、後でも出来るじゃない。軽音部のライブは今だけだよ?見逃したら後悔するって」

…それは、そうだけど。

でも、私には軽音部のライブよりも、優先すべきことが…。

「行ってらっしゃい。楽しんできてくださいね」

何の屈託もなく、結月君は微笑んだ。

…今の結月君の心情は如何ほどか。

私には推し量ることも出来ない。

「…うん、じゃあ…ここ、お願いね、結月君」

こんなに気を遣ってもらって、それ以外何が言えただろう。