星と月と恋の話

「どうしたの?二人共…」

私は慌てて立ち上がった。

も、もしかしてだけど。

今の結月君との会話、二人に聞かれてないよね?

恥ずかしいよ。

と、心配したものの。

「差し入れ、持ってくるって約束したでしょ?」

「お疲れの星ちゃんに、労いの差し入れを持ってきました〜」

二人共、愛想良く笑うばかり。

どうやら、結月君との会話は聞かれてない様子。

ホッ。

安心すると同時に、二人の持ってきてくれた差し入れの食べ物の匂いが、鼻孔をくすぐった。

あー、凄い良い匂い。ソースの匂いだ。

焼きそばか、お好み焼きかな?それともたこ焼き?

どれでも良いや。凄く良い匂い。

何にせよ、とっても有り難い。

忙しくて、私自分で買いに行けないから。

「ありがとー助かる〜!」

私は海咲と真菜に、大袈裟にハグしながらお礼を言った。

差し入れも嬉しいけど、二人が訪ねてきてくれたことが嬉しかった。

妬ましいなんて思ってたけど、やっぱり持つべきものは心優しい友達ね。

一気に元気出た。

と、思ったのも束の間。

「私達、午後の二回目終わったら暇になるんだけど、星ちゃんはここ、ちょっと抜けられないの?」

海咲が、あっけらかんとしてそう尋ねた。

え。

「ずっと缶詰じゃ疲れるでしょ。後で、ちょっと抜けておいでよ。講堂で軽音部のライブやってるんだよ」

「そうそう。星ちゃん観たいって言ってたじゃん」

ちょ、ちょっとちょっと。

誘ってくれるのは嬉しいけど。

ついさっき、結月君の申し出を断ったばかりなのに。

結月君の前で、そんなこと聞かないでよ〜っ!

行っておいでよって言われる流れじゃん!

私は冷や汗をかきながら、チラッと結月君の方を見た。

あぁほら。「やっぱり」みたいな顔してる!

違うんだよ〜!確かに軽音部のライブは観たかったけど!でも!

結月君をほっぽってまで行きたいとは思ってないよ!本当に。

「い、いや〜。でも…こっち忙しいから、私は遠慮、」

と、慌てて言いかけたけれど。

「良いですよ、行ってきてください」

案の定。

案の定、結月君はそう言った。

あぁ、ほらもう…。

「こっちは僕が引き受けますから。ちょっとくらい抜けても大丈夫ですよ」

「ほらほら。三珠クンもこう言ってるんだし」

「ありがとね〜三珠クン。後で、星ちゃんちょっと借りるね」

結月君が勧めてくれるものだから、真菜と海咲もすっかりその気。

あぁ…もう引き返せない。

そんな気なんてなかったのに…。結局、結月君を見捨てていくことになっちゃった。

うぅ、気まずいことになった…。