星と月と恋の話

早いところ終わらせて、お昼時には屋台巡りをしたいなー、なんて。

甘いことを考えていた時期が、私にもありました。

正直、今すぐ叫びたい。

「ふぇぇぇん!終わんないよー!」って叫びたい。

それくらい地味で、つまらなくて、遅々として進まない。

回収ボックスから一枚ずつ、アンケート用紙を取り出しては。

各項目につけられた印を確認して、別の用紙にその結果を記入して…。

っていう、単調な作業の繰り返し。

自分が機械になったみたいで、頭がぐるぐるする。

うぎゃーっ!ってなるのは当然だよ。

やっぱり私も踊りたかったー!ともなるよ。当然だよ。

でも、結月君があまりにも、黙々と静かに作業してるものだから。

何だか文句も言えない気分。

結月君、全然嫌じゃないんだろうか?この作業が?

そりゃ彼の場合、派手な舞台で踊ってるイメージが全くないから。

こういう作業の方が性に合ってるのかもしれないけど。

それにしたって、静か過ぎるよ。

愚痴の一つくらい言ったって良いのよ?許されると思うよ?

むしろ、言ってよ。

私が我儘みたいじゃない。

いや、実際私が我儘なんだろうけどさ。

でも結月君も、ちょっとくらい文句言って良いよ。

でなきゃ私がいたたまれない…。

…あぁ、肩が凝る。

ぐるぐると腕を回し、肩と首の凝りをほぐしていると。

「…つまらないですか?」

「へ?」

いきなり話しかけられて、思わず変な声が出た。

びっくりした。

喋るなら喋るって言ってよ。

「星ちゃんさん、さっきから目が死んでるなぁと思って…」

…。

…そうね、死んでるでしょうね。

我ながらそう思うわよ。

「大丈夫ですか?」

大丈夫じゃないって言ったら、目の前のアンケート用紙の束が少しでも消えてくれるのか。

消えてくれないよね。

だから、私は嘘でも、

「う、うん。大丈夫だよー」

と、言っておく。

「ただまぁ…ちょっと…退屈な作業ではあるよね」

作業量は、どうやったって変わらないんだから。

せめて、ちょっとくらいお喋りしながら作業したい。

そうしたら少しは退屈が紛れるだろう。

「結月君こそ、つまらなくないの?」

「僕は、別に…。去年もその前も、その前も…毎年裏方仕事でしたから」

え、そうなの?

熟練の裏方仕事職人、結月君。

「僕にとって文化祭はそういうものなので…。別に苦痛ではないです」

「へ、へぇ…」

それはそれは…何て言うか…。

…か、可哀想だね。

私だったら耐えられないわ。多分、二年目辺りでストライキ起こすわ。

それを真面目にやってるんだから、結月君は偉い。

すると。

「もし嫌だったら、星ちゃんさん、ここは僕に任せてお友達のところに行ってきて良いですよ」

「えっ」

結月君から、とんでもない申し出をされた。