星と月と恋の話

そして、その十数分後。

いよいよ本番が始まった。

私は、真菜や海咲や正樹達の華やかなダンスステージを眺めながら…。

「…アンケートにご協力お願いしまーす…」

アンケート用紙を配っていた。

この悲しみ。

誰か分かってくれるだろうか。

唯一、私と同じ悲しみを味わっているであろう結月君はと言うと。

「アンケートにご協力お願いします」

彼は、ステージに未練なんて全くないようで。

テキパキとアンケート用紙と筆記用具を配っていた。

偉い。君は偉いよ。

いつまでも未練がましくしてるのは、私だけだよ。

だって仕方ないじゃん。あんな派手なステージを見せられたらさぁ。

あぁ、私もあっち側にいられたらなー、って思うよ。そりゃあね。

くっそー…。真菜達、良い演出してるじゃないの。

皆ダンス上手いしさー…。私も練習すれば、あれくらい踊れる。

楽しそうで良いなー…。羨ましい。

ダンス組に選ばれた人達は、皆勝ち組だよ。

ダンス組に選ばれないどころか、ひたすらボールペンと紙切れ配ってる私は、学年で一番の負け組だよ。

はぁ、切ない。

全然文化祭エンジョイ出来る気がしない。

そうこうしているうちに、午前一回目のステージが終わり。

今度は、配ったアンケートを回収する作業が始まった。

「記入したアンケートは、こちらに入れてくださーい…」

華々しいステージを終えた真菜達は、今頃良い汗かきながら、スポーツドリンクを呷っているだろうに。

私がやってることと言ったら、箱を抱いて、アンケート用紙を集めるだけ。

切ないを通り越して、虚しい。

しかもこの後、これを集計する作業も待ってるんだよ?

想像しただけで顔が能面になりそう。

ってか、多分なってる。

「アンケートのご協力、ありがとうございました」

丁寧に、ぺこぺこ頭を下げてる結月君が眩しい。

君は偉い。本当に偉いよ。

私なんて、もう投げ出したい気分だもん。

仕方ないと納得したはずだったけど、やっぱりステージを見せられると、つい。

落差を感じて、どよーんと落ち込んでしまう。

私の文化祭って一体…。