星と月と恋の話

「元気出して、星ちゃん」

そう言われて、そんなに簡単に元気が出るなら、ハナから落ち込んだりしないわよ。

「そうそう。後でほら、差し入れ持っていくからさぁ」

と、真菜が慰めるように言ってくれた。

「ありがと…」

とは言ってみたものの。

二人共良いよね。可愛い衣装着られて、楽しくダンス踊って、それを観客に見てもらって、拍手喝采浴びて。

おまけに、本番の合間を縫って、他のクラスの出し物を見に行く時間まであるんだから。

私なんていつもの制服姿で、空き教室に引きこもって。

アンケート用紙を、黙々と集計するしかやることがないのよ。

しかも、ペアの相手が仲良しのクラスメイトならともかく。

あの結月君よ?

そりゃ結月君は今、私の彼氏ではあるけど。

当然のごとく、本命の彼氏ではないんだから。

つまんないどころじゃない。

私を差し置いて、二人して文化祭エンジョイしてんじゃないわよ。

全然エンジョイ出来ない人だっているのよ。私みたいにね。

そう思うと、この不平等さに涙が出そう。

去年は楽しかったのになぁ。

何で今年はこんな目に。

って、私のくじ運のなさが、全ての原因な訳で。

誰を恨むことも出来ない。強いて言うなら、自分のくじ運のなさを恨むしかないのが辛いところ。

どうせ、最近の私は全然ツイてないわよ。

あんな罰ゲームを受けさせられてるって時点で、ツイてないにも程があるわ。

「お、そろそろお客さん入ってきたよ」

「本当だ。私達、舞台袖に行かないと」

はいはい。華やかな今日の主役のお二人はそろそろ出番ですね。

そうすると。

「私も…アンケート用紙、配ってくるわ…」

お客さんが入ってきたってことは、私の仕事が始まるってこと。

そう、アンケート用紙と筆記用具を配る、という仕事が。

「頑張ってね、二人共…」

「あはは。星ちゃんも頑張ってね〜」

皮肉にしか聞こえないわよ。全くもう。