星と月と恋の話

午前、記念すべき一回目の発表前。

お客さんが入ってくる前に、私はステージが設営された教室を見に行った。

いつもの教室とは思えないほど、様変わりしている。

教壇は、照明をいっぱいつけた華やかなステージに変わり。

机は全部取り払われて、代わりに観客が座るパイプ椅子が並んでいる。

華やかなのは、ステージだけではない。

窓や壁も、紙テープやステッカーなんかで飾り付けられて、いかにもダンスステージって感じ。

全体的にポップな印象で、見ているだけでも楽しくなってくる。

やっぱり文化祭はこうじゃなくちゃね。

これ、ステージ設営担当の隆盛が主導で飾り付けしたらしいよ。

さっすが。センスある〜。

更に。

「あ、海咲。真菜」

「おっ、星ちゃんだ」
 
「やっほ〜」

本番を前にして、ダンス担当の真菜と海咲は、二人共それぞれ華やかな衣装に身を包んでいた。

真菜はブルーの、海咲はオレンジの衣装だ。

特に海咲の衣装は、スパンコール付きのきらきら光るリボンが、胸元にくっついている。

ちょっと動く度に、スパンコールのきらきらと長いリボンがひらひら揺れて、めちゃくちゃ可愛い。

何処で用意したのよ、そんな衣装。

「二人共、衣装可愛いじゃん。良いなぁ〜」

私もそんな衣装着て踊りたかった。

私なんて制服だよ、いつもの。

せめて衣装だけでも、ダンス組とお揃いが良かった。

それに髪型も。

二人共、ヘアアイロンで髪をくるくる巻いている。

そこに、衣装とお揃いのリボンやヘアピンで留めていて、めちゃくちゃ可愛い。

メイクだって決まってるし、耳にはお揃いのイヤリングも光っている。

靴は、体育のとき使うスニーカーだけど。

いつものスニーカーじゃなくて、シールとスパンコールで飾ってあって、動く度にきらきら光っている。

完璧過ぎる。

頭のてっぺんから爪先まで、一部の隙もない。

私なんて、普段授業受けてるときとなんら変わらない格好だよ?

この落差の激しさよ。

悲しくなってくるよね。

それなのに。

「でしょ〜?衣装、めっちゃ気合い入れたから」

「髪型もね。朝イチで皆集まって、お互いヘアアイロンで巻き合ったんだ〜」

二人共、この可愛い衣装に大はしゃぎ。

そりゃそうなるよね。

しかもこの後、この華やかなステージでダンスを披露するんだもんね。楽しみに決まってるよね。

私なんて、本番が始まってもアンケート用紙を配るだけだよ?

「アンケートにご協力お願いします」って言いながら。

ちょっとくらい、私に気を遣ってよ。

「良いなぁ、二人共…」

「そっか。星ちゃん裏方だもんね」

「しかも、本番の時間以外、ずーっと空き教室で三珠クンと一緒なんだもんね」

「それはキツいわ…」

それを言わないでって。

現実を突きつけられて、余計落ち込むでしょ。