星と月と恋の話

一年Bクラスのダンス発表は、午前に2回、午後に2回の計4回行われる。

私達アンケート係は、発表の度に教室の出入り口に立って、アンケート用紙と筆記用具を配り。
 
発表が終わると、また出入り口に立って、回収ボックスに用紙を入れてもらう。

アンケート用紙を集め終わったら、今度は別室の空き教室に移動。

ボックスに集められたアンケート用紙を開いて、その結果を集計し、表にまとめる。

ここまでが、アンケート係の仕事である。

…思ったより大変だよ。

それを、二人きりでやるんだから。

発表と発表の合間に、私自身も文化祭を回って遊びたい、と思ってたのに。

それが出来る暇、あるのかなぁ? 

ダンスグループのメンバーは、午前2回、午後2回の発表の他には何もしなくて良いので。

発表5分前に集まって、発表して、それが終わったらあとは自由だそうだ。

海咲と真菜が言ってた。

だから二人は、発表の合間に屋台巡りをするらしいよ。

あぁ、羨ましい。

私達裏方仕事には、遊ぶ暇もないのか。

いや、そんなことはない。

だって、同じ裏方仕事の隆盛は、ステージ設営の仕事が終わったらあとは自由らしいし。

…滲み出る不平等感。

もしかして、いや、もしかしなくても。

アンケート係って、かなりの貧乏くじなのでは?

事前の準備も必要だし、当日もほぼ休みなく働き詰めって。

…あぁ、切ない。

高校生の文化祭なんて、貴重な青春の1ページじゃない。

その大事な青春の1ページを、まさかアンケート用紙に囲まれながら過ごすなんて。

やっぱり貧乏くじだ。

とは思っても、逃げる訳にはいかないし。

仕方なく、私は憂鬱な気分で登校した。

周囲の生徒達が、文化祭の盛り上がった空気に浮かされているのが分かって。

それがまた羨ましかった。

良いなー。私も、去年はあんな感じだったんだろうに。

今年はこの有様だよ。

はー。

内心、特大の溜め息をつきながら。

私は悲しくも、本日一日…アンケート用紙に囲まれながら過ごします。

誰か同情してください。

こんな日に空き教室にこもって、紙に囲まれて黙々と作業してるのなんて、私と結月君くらいだよ、きっと。