星と月と恋の話

向かうところ敵なしだと思われた結月君だったが。

ここに来て、まさかの欠点が発覚。

結月君、キーボード入力するのが物凄く下手。

超遅い。

「D…D…あ、あった。次にAは…」

一文字一文字、アルファベットを探しながらキーボード打ってる。

パソコンを持ってないせいか、全然キーボードを打ち慣れてないんだ。

…なんか微笑ましいなぁ。

可愛いところあるじゃん、結月君…。

「…何でにこにこしてるんですか?」

結月君が顔を上げて私を見た。

ううん、ちょっとね。

馬鹿にしてるんじゃないんだよ?

「何だか微笑ましいなぁって…」

「…何が?」

気づいてない辺り、余計に微笑ましい。

それと。

「キーボード入力は、私が代わるよ」

ようやく、私が役に立てる機会がやって来た。

このままじゃ、私は何もさせてもらえないところだったよ。

「え?でも…」

「大丈夫大丈夫、任せて」

任せてなんて言えるほど、私だって入力が早い訳ではないけど。

少なくとも、結月君よりは早いと断言出来る。

それだけは確実だから。

せめて、入力は私がやるよ。

フォーマットを結月君が完成させてくれてるから、あとは質問項目を入力するだけだし。

その質問項目だって、結月君が手書きで用意してくれてるから。

その文章、そのまま入力すれば良いんでしょ?

楽なものだ。

カタカタとキーボードを叩いて、質問項目を入力する。

「…早いですね」

「ん…まぁね」

私が早いんじゃなくて、君が遅過ぎるんだよ、とは。

言いたくても言えなかった。

ここまでほぼ全部、お膳立てしてもらってるしね。

文句言える立場じゃない。

「…はい、こんなものかな」

「ありがとうございます」

私は、あっさりと入力を終えた。

おぉ。結構良い感じじゃん。

あとは、これを印刷すれば完成だ。