星と月と恋の話

「さすが…いつも作ってるだけあって、作り慣れてるね…」

熟練の味がするよ。

一端の主婦だよ君。

良い奥さんになれ、良い旦那さんになれるよ。

まぁ、その服装じゃ、結婚までの道のりは遠そうだけどさ。

「そうでもないですよ。出汁巻き卵は、これまで作ったことなかったんです。星ちゃんさんが好きだって言ってたから、ちょっと練習して…」

ちょっと練習しただけで、こんなに上手くなるものなの?

多分、元々卵焼き作るの上手だったんだろうなぁ。

「美味しかったなら良かったです。早起きして作ってきた甲斐がありました」

と、言って。

結月君は嬉しそうに微笑んだ。

…君、まともに笑うところ初めて見たけど。

意外と、笑顔は素敵なのね。

もうちょっと見た目に気を遣ったら、かなり垢抜けるんだろうに。

出汁巻き卵の努力は怠らないのに、どうしてお洒落の方の努力は怠るのか。

自分の見た目には頓着しないのかな。

私はむしろ、そういう見た目こそ気を遣いたいけど。

…でも、まぁ。

何にせよ、特技があるのは良いことだ。

結月君の隠れた長所が明らかになった。

それだけでも、今日は収穫だったな。

…それにほら、美味しいお弁当食べられたし。

「フルーツサンド、っていうのも好きだって言ってたから、作ろうかなとも思ったんですけど…。それは次回で良いですか?」

「あ、うん…。無理しなくて良いよ」

なんか、あれだね。君律儀だね。

チョコレートをカカオ豆から作って!って頼んだら、努力はしてくれそうだね。

長所なんだか、短所なんだか…。

ひとまず、お弁当は凄く美味しかったです。