星と月と恋の話

今、結月君…何て言った?

あまりにびっくりして、食べる手が止まってしまった。

…作ったの自分だって、今言わなかった?

「え…。ほ、本当に…?結月君が作ったの?これ…」

「はい」

はいって、そんなあっさり頷くの。

「て、手伝ったとかじゃなくて?イチから?全部?」

お母さん一人に任せるのは忍びないから、結月君も手伝った、っていうオチじゃなくて?

まさか、結月君がこれ全部一人で作ったとかじゃなくて、

「あ、はい…。全部自分で作りました。今朝…早起きして」

えぇぇぇぇぇ。

と、思わず声が出そうになった。

ついでに、口の中の出汁巻き卵を吹き出すところだった。

危ない危ない。

でも、それくらいびっくりした。

慌てて出汁巻き卵を飲み込んで、そして。

「じ、自分で作ったのこれ?嘘、結月君こんなに料理得意だったの…!?」

めちゃくちゃ意外過ぎる特技なんだけど。

「得意ってほどじゃないですけど…」

何謙遜してるの。
 
これだけ作れたら、得意なうちに入るわよ。しかも高校生で。

結月君は、本気で調理学校を目指すべきだと思う。

「…まぁ、普段からよく料理は作るので、慣れてはいます」

と、結月君は言った。

な、何その、意外過ぎる特技。

知らなかったよ。今日がなかったら、多分一生知らなかったと思う。

結月君が、こんなに料理が得意だったなんて。

女子力高過ぎるでしょ。

その辺女子(私を含む)より、余程女子力高いよ。

結月君のお母さん、普段料理作らないのかな。

「じ、じゃあ、普段の料理も、結月君が作ってるの?」

「えぇ、まぁ大体…」

それも初めて知ったよ。

でも、そういえば家で料理してるって言ってたね。ここまで本格的だとは。

「学校に持ってくるお弁当も、自分で毎朝作ってます」

それも初めて知ったよ。

お弁当を自分で作ってくるなんて、偉過ぎる。

なかなかいないよ。高校生で、男の子で、毎日自分でお弁当作ってくる人なんて。

少なくとも、私の周りにはいない。聞いたこともない。

お弁当がないなら、学食かコンビニで済ませる人の方が、圧倒的多数だから。

「え、偉いね…」

「…?そうですか?」

そんな不思議そうに首を傾げなくても、君は偉いよ。

地味な見た目だけど、やってることは偉かった。

何だか、この女子力の高さだけで、結月君を見る目が変わりそうだよ。