星と月と恋の話

ほうじ茶を一口飲んで、ほっと一息つく。

思いの外美味しかった。

家で飲んでるお茶より、全然美味しい。

何が違うんだろう?

良いお茶っ葉使ってるのかなぁ。

って、そこだけこだわっても…。

こだわるなら、もっと…自分の見た目とかにこだわろうよ。

お茶にこだわるなんて、お年寄りじゃないんだから。

まぁ、もらっておいて文句言うのは失礼かもしれないけど。

でも、何だろう。

凄くこう…所帯染みてる感が否めない。

すると。

「折角ですから、もうお昼にしますか?ちょっと早いですけど」

「あ、うん…そうだね」

と、私は返事をした。

さっさとお昼食べて、さっさとお開きにしたいもんね。

正直、そんなにお腹は空いてないんだけど。

早く食べて早く帰ろう。

しかし、お弁当か…。

物凄く意外なんだけど…やっぱり、結月君のお母さんが作ってくれたのかな?

何て説明して、作ってもらったんだろ。

まさか「今日彼女とデートだからお弁当作って」って、馬鹿正直に頼んだんじゃないよね?

どうせ三ヶ月で別れるんだから、親を巻き込むのはやめて欲しいんだけど。

うぅ、想像しただけで寒気が…。

「星ちゃんさん、割り箸どうぞ」

「あ、うんありがと…」

「それとこれ、お手拭き」

結月君は、ご丁寧に温めたお手拭きを手渡してきた。

そこはさぁ…個包装のウェットティッシュとかで良くない?

まさか、本物の、布のお手拭きを持ってくるなんて…。

しかも、ちゃんと温かい。

マメなんだか、単に貧乏臭いんだか…。

「どうぞ。…残しても良いですから、好きなの食べてください」

「あ、ありがとう」

どぎまぎしながら返事をして、結月君が広げてくれたお弁当箱の中を見ると。

…ちょっとびっくりした。

お弁当箱の中身が、彩りも綺麗で、予想以上に凄く美味しそうだったから。

貧乏臭いと思っていたのが、一転。

お店に頼んだ、お花見弁当を届けてもらった気分。