星と月と恋の話

…別れたくない?

別れたくないって言った?今。

私は、自分が別れたくないばかりに、自分に都合の良い幻聴を聞いているのではないかと思った。

あるいは、夢でも見ているんじゃないかと。

試しにほっぺたを抓ってみると、ちゃんと痛かった。

…ということは、現実なんだ。

夢でもないし、幻聴でもないんだ。

本当に、結月君は…。

「わ…私で、良いの?」

私は、かろうじて声を絞り出した。

「だって、私は…結月君に相応しい人間じゃ…」

「…そんなことを言うなら、僕もまたあなたに相応しい人間じゃないですよ」

…それは…。

「お互い相応しくないない者同士…。ある意味で、相応しいのかもしれませんね」

何、その言葉遊び。

でも…もし許してもらえるのなら。

相応しくない私でも、結月君の隣にいることを許してもらえるのなら。

「…私も、結月君と一緒に居たい」

「…」

結月君は、驚いたような顔で私を見た。

何よ。

断られると思ってたの?お前なんて私に相応しくないんだから、もう別れるって言うと?

私がそんなことを言うと、本気で思ってたの。

それは有り得ないわよ、馬鹿。

変わったんだから。

私も。…君も。

「…一緒に居ても良いかな?」

君に相応しくない私でも。

君が、私の存在を許してくれるなら。

「…えぇ。一緒に…居てください」

「…ありがとう」

去年ここで、罰ゲームで結月君に告白したとき。

あのときの私に、教えてあげたい。

「あなた、来年になったら、今目の前にいる人のことが好きで堪らなくなってるんだよ」って。

きっと信じないでしょうけどね。

今の私だって、信じられない思いだもの。

こんなに誰かの傍に居たいなんて、本気でそう思えるほど好きな相手が出来るなんて。