星と月と恋の話

結月君に呼び出されて、私は校舎裏に向かった。

…懐かしいね。

最初に罰ゲームで告白したときも、ここに来たっけ。

なんて皮肉だろう。

あのときの私は、結月君が私の告白を断ってくれることを心から祈っていた。

でも、今は逆だ。

結月君に酷いことをした…緋村君を傷つけた…その罰なんだろうか。

まだ何も言われてないのに、すっかり別れ話をされた気になって。

一人で涙ぐんでいるところに、結月君が口を開いた。

「…あの。良いですか、言っても」

別れ話を、ってこと?

正直「嫌だ」って言いたかった。

何も言わないで。お願いだから。

何も言わないでいてくれたら、まだ別れなくて済むのに。

…でも、そんな訳にはいかなかった。

「…うん、どうぞ」

そう言うしかなかった。

ここまで来て、逃げ回ることは出来ない。

大人しく、潔く…判決を受けるしかないのだ。

「…僕、前に言いましたよね。『僕はあなたに相応しい人間じゃない』って」

「…うん、言ったね」

「あれは…事実だと思うんです。僕はあなたに相応しくない。本来なら、お互い絶対釣り合わないはずの関係だと…思います」

「…」

そうなのかな。そうなんだろうか。

でも、去年までの私なら、そう思っていただろうね。

三珠クンと付き合うなんて有り得ない、絶対私に釣り合わないって、信じ込んでいたに違いない。

「だから『相応しくない』と言った、あの言葉は撤回しません。…が、その後に言ったことは、撤回させてもらえませんか」

「…え?」

「自分から言った癖に『やっぱり無しにして』と撤回するのは、非常に身勝手だと自覚していますが…。…僕に出来るのは、あなたに謝罪することだけです」

「え。…え?」

結月君は、ぺこりと私に頭を下げた。

「ごめんなさい、傷つけるようなことを言ってしまって。『別れても良い』と言いましたけど、あれ、撤回させてください」

…え。

…撤回?

「別れたくないです。あなたを失いたくないです…。相応しくないのは百も承知ですが、その上で、僕を選んでくれませんか」

「…」

…そのときの、私は。

多分だけど、とんでもなく間抜けな顔をしていたに違いない。