星と月と恋の話

――――――…結月君との冷戦が続いて、およそ十日が経過した。

何をやってるんだ私は、と思いながら十日も経ってしまった。

未だに、私は結月君に声をかけることが出来ず。

相変わらず、結月君から無視されている。

私がそんな目に遭っているとも知らず、湯野っち達は、とっくに何事もなかったように日常に戻っている。

さすがにムカつくけど、しかし自分から結月君に話しかける度胸がないのは、別に湯野っち達の責任じゃないし。

結局、私が意気地なしだってことだ。

何とかしなきゃならないのに、話し合いしなきゃならないのに。

どうしても、結月君に話しかけるのが怖い。

絶対まだ怒ってるよ。

自分が誠意のある人間だからこそ、誠意のない人には厳しい。結月君はそういう性格なのだ。

でも私は、自分から結月君に話しかけることが出来ない。

「やっぱりあなたとは無理です」とか言われて、別れ話をされたらどうしよう。

充分に有り得ることだ。

結月君の方から別れ話を切り出されたら、どうしようもないよね。

涙を呑んで、結月君の言うことを受け入れるしかない。

頭の中で、何度もその場面を想像しては涙目になる。

この十日間ずっと、それを何度も繰り返している。

そして、私は日に日に恐怖を募らせていった。

この冷戦状態に、そろそろ結月君も堪忍袋の緒が切れる頃だろう。

私との関係を、さっさとリセットしたい。

そう思って、結月君の方から私に声をかけてくるんじゃないかって。

自分から声をかける勇気がないのだから、結月君の方から話しかけてくれるのは有り難いけど。

別れ話を切り出す為に話しかけられるのなら、一生話しかけられない方がマシだ。

顔を合わせたら。目を合わせたら、「これまでにしましょう」と言われるかもしれないと思って、それが怖くて。

かといって、いつまでもこのままって訳にもいかなくて。

悶々と葛藤して、勇気を出さなきゃと思い続けて。でも出来なくて。

私の馬鹿、意気地なし、と自分を責めていたそんな矢先。

「…ちょっと、話したいことがあるんですけど」

放課後。

ふらりと私の傍にやって来た結月君が、私に声をかけた。

心臓が飛び跳ねた。

そしてとうとう、タイムリミットが来たと思った。

ついに判決が下されるときが来たのだ。

逃げることは出来なかった。