星と月と恋の話

「何をしたのか知らないが…。…お前は日頃の行いが良いから、たまの失敗くらいは、謝れば許してもらえるんじゃないのか?」

優しい言葉をどうもありがとうございます。

僕って日頃の行い良いんですか?

「…それでも、許してもらえなかったら?」

「それは…。…まぁ、そういうことも、たまにはあるかもしれない」

ですよね。

僕もそう思います。

「でも、許してもらえる努力をした上で許されないのと、ハナから何もせずに許されないのとでは、前者の方がまだマシなんじゃないか?」

…またしても、ド正論。

胸に突き刺さりますよ。それはもうグサグサと。

「そうか…。うん、そうですよね…」

結局のところ、誠心誠意対応するしかない、ってことですね。

そりゃそうだ。

許してもらえるにしても、許してもらえないにしても。

ともかく謝らないことには、僕だって気が済まない。

「分かりましたよ…。…頑張ってみます」

「そうか」

「それでもし、許してもらえなかったら…そのときは今度こそ、屋根から放り投げてください」

「いや、そ…。それはやめた方が良いんじゃないか…?」

そうですね。僕も、屋根から放り投げられるような事態にはならないことを祈ってますよ。

それってつまり、唯華さんとの破局を意味する訳ですから。

こちらから「別れても良いんですよ」とか言っときながら、本当に「じゃあ別れる」と言われるのが怖いなんて。

つくづく、馬鹿なことを言ってしまったものだ。

自分の愚かさを恥じる前に、やるべきことがある。

全く、我ながら何をしているのだか。

去年までなら、唯華さんみたいな人と付き合うなんて、絶対有り得なかっただろうに。

僕にとっては、一生手が届かないほど遠くにいる人だった。

住んでいる世界が違う。両者の間には、越えられない壁がある。

お互いに、一生分かり合うことは出来ない。

罰ゲームで他人と付き合おうとする、そんな人を好きになるなんて絶対に有り得ない。

…そう思っていたのに。

何故か今となっては、そんな人を失うことを心から恐れている。

変わってしまったものだ。…僕も。

唯華さんと過ごした日々が、僕を変えてしまった。

その変化が、良いものなのか、悪いものなのかは分からない。

それでも今、ここに。

彼女を失いたくないと、心の底から願っている自分がいるのだ。