「いや、あの、瑠璃華さん。多分そういうことじゃ…」

「付き合うって、何処に付き合うのですか?深海魚水族館でしたら、是非私もご一緒したいですね」

「いや…。それは多分、瑠璃華さんだけなんじゃないかな…?」

何?深海魚水族館って。

い、いや。そんなことより。

「…何かの冗談?罰ゲームか何か?」

緋村君は、湯野っちに向かってそう尋ねた。

すると湯野っちは、にやにやしながら頷いた。

「そ。分かってるじゃん」

「あぁ、やっぱり…」

「何?ちょっと期待しちゃった?」

「いや、別に…」

戸惑った顔の緋村君。それを見て、にやにやと笑う湯野っちと、その取り巻き。

私はもう我慢が出来なかった。

「ちょっと、湯野っち…!どういうこと?」

起きてしまったものは、どうしようも出来なかったが。

それでも、割って入らずにはいられなかった。

「あ、星ちゃんおはよ」

おはよ、じゃないでしょ。

「どういうこと?何で罰ゲーム…」

「あぁ。実は昨日星ちゃんが帰った後、別のカラオケルーム行って、採点バトルやり直したんだよね」

湯野っちは全く悪びれずに、それどころか笑顔でそう言った。

何ですって?

「そしたら、言い出しっぺの私が負けちゃってさぁ。正々堂々、潔く罰ゲームを受けることにしたの」

「…!」

「ね?幽霊君はちゃんと身の程を弁えてるんだから、大丈夫だって言ったじゃん。こんなの大したことじゃないのに、星ちゃんったら大袈裟なんだから」

私は湯野っちに詰め寄ったまま、言葉を失った。

…話せば分かってくれるとか、それどころじゃなかった。

「さっきの緋村の顔!超ウケるよね」

「本当。罰ゲームお疲れ〜」

「私危なかったわ。あと一点低かったら、私が罰ゲームだったんだもん」

湯野っちも、その取り巻きも、楽しそうに笑うばかり。

その、一方で。

湯野っち達が「楽しい罰ゲーム」に笑っている一方で。

「…??どういうことですか?深海魚水族館で友好を深めるのでは?」

「深めないよ…」

事情が掴めていないらしく、相変わらず首を傾げている久露花さんと。

疲れたような、何かを悟ったような、困ったような…色々な感情を感じさせる顔の緋村君がいた。

…どうしてこれを見て、笑っていられるの。

…そして。

「…っ!」

思わず悲鳴が出そうになった。

振り向くと、そこには結月君がいて。

彼は無言で、全てを見ていた。