星と月と恋の話

…の、だが。

ここで、思ってもみない想定外の事態が勃発した。

「ところで、星ちゃんさん」

「何?」

「今日は何処に行くのか、もう決まってるんですか?」

と、結月君は尋ねた。

あ、そっか。

デートに行こうとは言ったけど、何処に行こうとは言ってなかったよね。

それは勿論…。

「そうね。今日は、えい、」

「もし良かったら、自然公園に行きませんか?」

…。

…は?

自然公園?

「この季節はコスモスが咲いてて綺麗なんです。見に行きませんか?」

と、結月君は提案した。

え、う…嘘でしょ?

自然公園なんて、デートスポットとしてアリなの?

ただ歩いて終わりじゃない?

それより、私は今日映画館に行くつもりで…。

しかし。

「お弁当作ってきたんです、僕。花を見ながら食べられるように」

そう言って、結月君は大きめの風呂敷包みを見せてきた。

何か大荷物持ってるな、と思ったら。

それお弁当だったの?

そんなの聞いてない。

何、その女子力。

初デートでお弁当持参なんて、それは男の子のやることじゃないでしょ。

今時女の子でも、初デートに張り切ってお弁当作ってくることなんて滅多にないよ。

そういうことは、もっと親密度が上がってからすることじゃない?

「え…えと…」

私は、思いっきり視線を彷徨わせながら言い淀んだ。

映画を観終わったら、適当なレストランに入ってランチでも食べるつもりだったのに。

お弁当なんて作ってこられたんじゃ「いや、映画館行ってレストランでお昼にしよう」なんて言えないじゃん。

折角作ってきたって言ってるのに、食べない訳にはいかないじゃん。

もう、私の馬鹿。

ちゃんと、「今日は映画館に行こう」って事前に言っておくべきだった。

後手に回ってしまったが為に、こんなことに。

こうなっては、私に選択肢はなかった。

「…駄目、ですか?」

ぐるぐる視線を彷徨わせている私に、結月君が不安そうな顔で聞いた。

うぅ。何この圧力。

「だ、駄目じゃないよ…」

って、言うしかないじゃん。本音は嫌だと思ってても。

「わ、分かった。…て、天気も良いしね。自然公園、行こっか」

結局、私は折れるしかなかった。

内心がっくりと肩を落としながら。