…何だか。

…びっくりした。

隆盛があんなに苛ついてるの、初めて見たかも。

「…保護者か何かなんですかね?」

教室に残った結月君が、ポツリと一言。

い、いや…そういう訳じゃなくて…。

「心配してくれてたんだよ、きっと…」

隆盛にまで心配かけて、悪いことをしてしまった。

私の責任だ。今回のことは。

結月君も、隆盛も、誰も悪くない。

私が勝手に暴走してしまっただけで…。

「最低だと言われても…。あの人の最低の基準が分かりませんね」

「気にしないで。隆盛は…私を心配してくれてるだけだよ」

「隆盛隆盛って言いますけど、僕だって唯華さんのこと心配してたんですからね。そこは忘れないでください」

「うん、ごめんね。ありがとう…」

…ん?

そうだ、ちょっと待って。

一つ確認しておきたいことがある。

「…ねぇ、結月君」

「何ですか?」

「君、一体いつから、私を下の名前で呼んでるの?」

何だか、凄くナチュラルに呼び方が変わってる気がするんだけど。

一体いつの間に…?

「あなたが、空の上でうさぎと一緒にソーラン節を踊ってる頃ですかね…?」

そ、そうだったの?

出来れば、私の意識がはっきりしてるときに変えて欲しかったよ。

「嫌なら、元に戻します」

「ううん、そのままで良いよ」

親密度が深まったみたいで、良い傾向じゃない。

何だか照れ臭いわね。

「下の名前で呼ぶの、あんなに恥ずかしがってたのに。もう良いの?」

「えぇ。そんなに遠慮する必要のある相手じゃないと、最近分かり始めたので」

「…」

…それは…フランクになったのだと解釈して良いの?

ねぇ。そういう解釈で良いんだよね?

うん、そういうことだと思おう。