星と月と恋の話

あれこれと考えた結果。

私はセーラー襟のブラウスに、ニットのカーディガン、下は履き慣れたジーンズというファッションにした。

メイクは控えめで、髪型もそんなに派手にはしなかった。

靴だって、飾り気のない黒いスニーカーを履いた。

出来るだけ派手ではなく、しかし最低限のお洒落は忘れない。

まぁ、これくらいが無難だろうと思ったのだ。

あとは結月君次第だよね…。

どんな格好をしてくることやら…。不安しかない…。

お願いだから、マシな格好してきてくれますように、と。

神に祈りながら、私は待ち合わせ場所の駅に向かった。

すると。

「…あれ?結月君?」

「あ、星ちゃん…さん。おはようございます」

結月君は、既に待ち合わせ場所で待っていた。

そんな、彼の今日の格好は。

「…」

…何とも言えない。

何とも言えなかった。

というのも、今までこんな服、見たことなかったから。

驚いて、私はまじまじと結月君の服装を見つめてしまった。

黒い上着の袖と襟と裾に、紅葉柄の生地が縫い付けられて。

上着の下には、白いシャツを着ているのだけど、そのシャツの胸にも紅葉の刺繍がしてあった。

…和柄、好きなのかな?

こんな服、初めて見た。

ダサい…ダサいかと聞かれたら。

…うん、やっぱりなんかダサいんだけど。

でも、予想していたのとはまた方向性の違うダサさで。

ちょっと反応に困る。

何処で売ってるの?その服…。

「…どうかしました?」

「え?あ、いや、ううん」

結月君の服をまじまじと見つめていた私は、声をかけられて我に返った。

まさか、その絶妙にダサい服、何処で買ったの?とも聞けず。

笑ってやり過ごすしかない。

結月君の服の趣味が、イマイチ分かんない。

まぁ、上下ジャージ姿じゃなかっただけ良しとしよう。

よく見たら、結月君の履いてるスニーカー、くたびれてよれよれ。

分かってないなぁ…。足元のお洒落に気を遣わない人は、駄目なのよ。

いくら良い服を着てても、ボロスニーカー履いてるようじゃあ…。

正樹や隆成を見習ってよ。二人共、いつもお洒落な靴履いてるよ。

…なんて、愚痴っても仕方ないか。

着替えてきてもらう訳にはいかないし。

今日のところはこれで我慢して、潔く結月君の隣を歩こう。

映画館なら暗いし、そんなに目立つこともないよね。多分。

「よし、じゃあ行こっか、結月君」

私は、服装にげんなりしているところを見られないよう。

努めて笑顔を作って、結月君を促した。