星と月と恋の話

更に翌日のこと。

「…」

「…大丈夫ですか…?」

「…はー…。…お腹空いた…」

「何だか、やつれてません…?」

結月君が、心配そうな顔でこちらを見ているのが、視界の隅に映った気がしたけど。

私の視線は窓の外に向いていた。

「大丈夫よ…。…しかし、今日の空は何で紫色なのかしら…」

「…絶対大丈夫じゃない…」

「さっきから、雲の上でうさぎがソーラン節踊ってるわ。楽しそうね…」

「絶対大丈夫じゃない…!見えちゃいけないものが見えてる…!」

何?見えちゃいけないものって。

うさぎちゃん、楽しそうじゃないの。

私も混ざりたいわ。一緒に踊ってこようかしら。

「不味いですよ唯華さん。あなた本当に不味いですって。しっかりしてください」

「大丈夫、私は元気よ」

「何処がですか?ヤク中みたいになってますよ」

ヤク中?何が?誰が?

「明らかにダイエットのやり過ぎですって。ここでやめましょう。本当に。切実に」

ダイエットをやめる?何を言い出すの。

「昨日体重を測ったら、2キロ近く痩せてたのよ。凄くない?ダイエットの成果が出てるわ…」

「いや成果出過ぎですから。やり過ぎ。絶対やり過ぎです。もうダイエット禁止。インストラクターとして、全力で止めます」

「何言ってるの…。やっと成果が出てきて、良いところじゃないの」

「良くないです。こんな短期間で2キロ近くって、それはもう病気ですよ」

「…」

…結月君たら、本当何を言ってるのかしら。

私はこんなに元気なのに。

朝だって、ちゃんとバナナ食べてきたんだから。大丈夫よ。

「今日は唯華さんの為に、スムージーと、クッキーを作ってきたんです。食べてください」

ますます、何を言ってるのかしら。

「豆乳と、果物と、数種類の野菜を混ぜて作ったスムージーです。試飲しましたが、そこそこ美味しいです。健康的な味がしますよ」

え、そんなことまでしてくれたの…?

そういえば結月君、最近毎日、何かしら作ってきてくれてるわよね。

…食べてないけど。

今度は飲み物にしたのね。

「それから、クッキーですけど…糖質を制限したおからクッキーです。砂糖は入れずに、甘味調味料を入れて作りました。牛乳は豆乳で代用して…卵も使ってません。超ヘルシークッキーですから」

「…」

「味も悪くないです。食べてください。本当に、キャベツ以外のものを食べないと駄目ですよ」

「…ごめんね、結月君」

作ってきてくれたところ、悪いんだけど。

「今日の私…お腹空き過ぎて、むしろ何も食べる気になれないの」

「…重症だ…」

「何なら、お昼のキャベツも要らないわ…」

「もう絶対ヤバい。やり過ぎです。ダイエット禁止。もう禁止です。インストラクターストップです」

何、インストラクターストップって。

ドクターストップみたいな?

「だって、食べる気になれないんだもん…」

「じ、じゃあせめて…スムージーを飲んでください」

「大丈夫よ。私、毎日青汁飲んでるし…」

「そんなことまでしてたんですか…?」

不思議なもので、あんなに不味かった青汁が、最近は普通に飲めるようになってきたのよ。

これって大きな進歩よね。