星と月と恋の話

「うぅ…。結月君が私をいじめる…」

「いじめてないですよ」

どの口で言ってるのよ。

私の傷口を抉りまくっておいて。

「僕はただ…事実を言ってるだけで…。それをどう受け止めるかは、星さん次第です」

それをいじめると言うのよ。

「コンビニスイーツを封じられたら…私はどうしたら良いのよ…?」

「はぁ…。別に…無理してダイエットしなくても良いんじゃないですか?」

え?

結月君、今何て?

「励ませと言われたから、これまで励ましてきましたけど…。僕は別に、星さんにダイエットして欲しいとは思ってませんよ」

「…結月君…」

それは、もしかして。

私は自分で気にしてるほど、太ってはいないというこ、

「星さんが例え、養豚場の豚のようにぶくぶくと太ったとしても。星さんが星さんであることに変わりはありませんから」

「…」

「僕は、ありのままの星さんが良いと思いますよ」

「…」

「そういう訳ですので、どうぞ、満足行くまでコンビニスイーツという餌を食べ、っと、危ない」

私は渾身の右ストレートを、結月君のお腹にお見舞いしようとしたのだが。

結月君は謎の俊敏性を見せ、華麗に躱した。

何で避けるのよ。馬鹿。

どういう反射神経してるの。

「どうしたんですか星さん、いきなり」

「どうしたもこうしたもないわよっ」

君のせいで、私は涙目よ。

つまりそれって、私は太ってるってことじゃない。

それも養豚場の豚のように!

普通言う?女の子にそういうこと言う?

付き合ってる彼女よ?言います?ねぇ。

普通の女の子だったら、ここで号泣してるわね。

「ボクシングでダイエットですか?それは良いと思いますが、親指はちゃんと握っておかないと怪我しますよ」

謎の豆知識ありがとう。

でも、そういうことじゃないのよ。

「結月君が何と言っても、私は絶対ダイエットするからね。見てなさい。絶対痩せてやるから!」

もう二度と、養豚場の豚呼ばわりはさせないからね。

見てらっしゃい。目に物見せてやるんだから。

そして、「失礼なことを言って申し訳ありませんでした」と、結月君に土下座して謝らせてやるんだから。

「そ、そうですか…。…不健康の元ですから、やめた方が良いと思いますけど…」

このまま結月君に、養豚場の豚だと思われながら生きてる方が。余程精神的健康に悪いわよ。

「それに真面目な話、これまでコンビニスイーツに週に4回や5回もどっぷり浸かってきたなら、ある種のコンビニスイーツ依存症も併発してるんでしょうし」

何ですって?

そんな病名みたいに言うのやめなさい。

別に、そんな病気になってなんかないわよ。

私は至って健全よ。

「いきなりやめたら、きっと禁断症状が出ますよ?…あ、でもやめる気ないんでしたっけ?じゃあだいじょ、いたたたたた」

「言ってくれたわね…?」

私は、結月君の耳たぶが引きちぎれんばかりに引っ張った。

ここまでコケにしてくれたんだから、覚悟は出来てるでしょうね。

「見てなさい。私は明日から心機一転して、真面目にダイエットに取り組むから!」

「…これまでは真面目じゃなかったんですか?」

あら?今何か仰って?