星と月と恋の話

「痩せない…。痩せないわ結月君…」

「まだ一週間じゃないですか…。たった一週間で目に見えて痩せたら、むしろ危険ですよ」

結月君は「まだ」一週間っていう感覚なのね。

私にとっては「もう」一週間の気分よ。

この一週間、可能な限り間食を控え。

普段の食事でも、ご飯のおかわりを我慢してきたのに…。

体重計が叩き出す数値は、全く変わらないのよ。

精々、ほんの数グラム減っているくらい。

数グラムの減量なんて、誤差よ、誤差。

スフレチーズケーキを我慢した代償が、たった数グラムの減量だなんて。

もう、ダイエットなんてやめてしまおうかしら。

…って、それはいくらなんでも早いか。

せめてもう一週間は頑張るわ。

「うぅ、痩せたい…」

「そうですか…。…大変ですね」

…ムカッ。

何よ、その他人事は。

私はガバッと起き上がって、結月君の腹部を摘んだ。

そして、その感触に愕然とした。

「君は良いでしょうよ!痩せっぽちだもんね!何よ、このカチカチのお腹は!謎のシックスパックを自慢してるんじゃないわよ!」

「し…。シックスパックじゃないし、自慢もしてませんよ」

「何で君はこんなに痩せてるの?私に隠れて、こっそりダイエットしてるんじゃないでしょうね!?」

「星さんじゃないんですから…。僕はダイエットなんてする必要がな、いたたたたた」

「わ・る・か・っ・た・わ・ね!」

えぇ、そうでしょうよ。

良いわね男子は。

女の子はどうしても、太りやすい体質なのよ。

君には分からないわよ。

「君は私を励ますのが仕事なんだから、ちゃんと励まして!」

「そ、そうですね…。…痩せないって言っても、以前よりは節制してるんでしょう?」

「そりゃ勿論よ」

「なら、ゆっくりでも、いずれ効果は出てくるんじゃないですか?そんなに焦らなくても」

…。

…やっとまともに励ましてくれたわね、

そう、それで良いのよ。

でも、焦りたくもなるわ。

だって、あんなに我慢してるんだもの。

「良い?コンビニスイーツは、私の人生の楽しみなのよ」

「はぁ…。贅沢なのかチープなのか分からない生き甲斐ですね」

黙らっしゃい。

「今までは、大体週4〜週5で食べてたの」

「それはいくらなんでも食べ過ぎでしょう」

「それが今は、頑張って我慢して…週3〜週4回しか食べてないのよ!凄く頑張ってるわ私!」

「…へー…」

「何よ、その興味のなさそうな生返事は!」

「いえ、大丈夫です。ちょっと…応援する気が一気に失せただけです」

何ですって?

ちゃんと応援するのが、専属インストラクターである君の仕事でしょう。