星と月と恋の話

「逃げ回っても無駄よ。今こそ年貢の納め時だから」

「ちょ、ちょっと意味分からないんですけど…。多分人違いだと思うので、お引き取り頂いても良いですか?」

「しらばっくれても無駄よ」

人違いなんかじゃないわ。

私を美味しいもので釣って、醜く太らせた張本人はあなたよ。

「良い?私に美味しいものばっかり食べさせて、みるみる太らせたのは結月君なんだからね」

「え、な、何のことですか?」

言わせるんじゃないわよ。

私の体重のことよ。

「その責任を取ってもらうわ。分かったわね?」

「えぇと…。ちょっと話が見えないんですが…。…星さん、何かあったんですか?」

「えぇ。大ありよ」

「何があったんですか?」

だから、言わせるんじゃないわよ。

これでも乙女なんだからね。

「なんか、星ちゃん幸せ太りしちゃったんだって」

と、真菜が言った。

「え?幸せ太り?」

「うん。三珠クンが美味しいものばっかり食べさせるからだって」

と、海咲が言った。

そう、その通りよ。

分かったわね結月君。己の罪が。

…しかし。

「…え?そんなの、僕濡れ衣じゃないですか」

…カチン。

「自分の罪を認めないとは…!君がここまで卑劣だとは思わなかったわ…!」

「えぇ…?…僕も星さんが自分の怠惰の責任を、他人になすりつけるほど卑劣だとは思いませんでした」

今のは聞かなかったことにするわね。

「ともかく!私は今日からダイエットするのよ。結月君にも協力してもらうから、そういうことで良いわね!」

「な、何で僕が…」

「い・い・わ・ね!」

「いたたたた…」

私は結月君の耳を摘んで、強く念押しした。

そんな私達を見て。

「仲良しだねー、星ちゃん」

「ほんと。変なコンビ」

真菜と海咲は、好奇心丸出しの目で見ていた。