星と月と恋の話

その日の放課後。

私は、早速結月君に声をかけてみることにした。

改めて結月君を前にして、私はこの人にデートの申込みをするなんて正気か、と思ったけど。

…正気なんだよねぇ。これが。

「今度の土曜日、一緒に出かけない?」

と、私は誘ってみた。

…言っちゃった。

とうとう言っちゃったよ…もう引っ込みつかないよ。

結月君の反応はと言うと。

「…」

驚いたような、聞こえてないかのような、ぽやんとした顔で私のことを見つめていた。

何なの、その表情。

何考えてるの、今。

あ、今週末の予定を思い出してるのかな。

今週は駄目なんだ、とか?

それならそれでも良いよ。

デートに行かずに済むなら、それに越したことはないし。

しかし。

「分かりました。良いですよ」

とのお返事。

がっくり。

断ってくれるかと、一縷の希望を抱いてみたけど。

やっぱり駄目だった。

そっかー、オッケーか。

まぁ、仕方ないよね。

どっちにしても、いずれはいつかデートに行くことになるんだし。

だったら、早くに慣れておいた方が良いや。

「じゃあ週末、朝の十時に、駅前で待ち合わせね」

「はい…分かりました。行きます」

「うん、宜しく」

私はこのとき、軽いノリで結月君を誘い、軽いノリでデートの約束を取り付けた。

週末、まさかあんなことになると分かっていたら。

きっと、こんなに軽い気持ちでデートの誘いなんか出来なかったに違いない。

全ては、後の祭りということだ。