しかし、それどころか。

「ね、星ちゃん。そろそろ三珠クンとデートじゃないの?」

昼休み、海咲と真菜の三人で学食に来て。

本日のランチを食べていると、海咲が面白そうにそう言った。

…げ。

思い出さないようにしてたこと…いきなり言い出さないでよ。

心底重たい溜め息が出そう。

「月2でデートだもんね。そろそろじゃない?」

「言わないでよ…。思い出さないようにしてたのに…」

「でも、罰ゲームは罰ゲームでしょ」

海咲の奴。自分が罰ゲーム押し付けてきた癖に。

これでも大変なんだからね。週3で結月君と一緒に帰ってさぁ。

「今のところ、結月君の方からデートの話はしてこないんだよねー…」

「向こうも牽制してるんじゃない?」

かもね。

思った以上に、押しに弱い人だし。

私の方から誘わないと、一緒に帰ろうともしないし。

本当に付き合ってるのか疑問になるくらい。

何度も言うように、ぐいぐい押してこられるよりマシ。

「やっぱり、こっちから誘うしかないのかー…」

「良いじゃん、別に。向こうから『遊園地デートしようよ』なんて言い出されたらキモいでしょ」

それはまぁ、確かに。

付き合って一週間で遊園地デートはキツいわ。

ましてや、結月君とは無理。

そもそも、何処に行くにしても無理ゲーな気がする。

「何処に行くの?三珠クンと」

と、尋ねる真菜。

「真菜…。それ私が聞きたい」

「あはは。星ちゃんの話を聞くに、全然共通の話題ないもんねー」

そうなんだよ。

共通の話題が全然ないから、何処に行けば良いのかも分かんない。

何処行くのが正解なのかなぁ?

「無難に、一緒に買い物行けば良いんじゃない?」

と、簡単に言う海咲。

だから、海咲は他人事だからそんな簡単に言えるのよ。

一緒に買い物行くなんて、簡単に言うけど簡単じゃないのよ。

「いつも話題に困ってるのに、一緒に買い物なんて行ったら間が持たないわよ」

「まぁ、三珠クンのあのセンスじゃあ、一緒に買い物はキツいよね。趣味合わなさそう」

本当だよ。

三珠クンがどんな買い物するって言うの?

あの人が何か買い物してる姿、全然思い浮かばない。

逆に、私の買い物に付き合ってくれる想像がつかない。

あの人と一緒に、洋服とか小物とか選んでる姿が思い浮かばないよ。

だから、一緒に買い物はまだ無理。

ハードル高過ぎ。