星と月と恋の話

「干し柿好きだったのね、君…」

「えぇ、まぁ…。それに、今年は良い感じに出来たので、余計に」

…ん?

良い感じに出来たって…。

…まさか。

「…干したの?」

「え?」

「まさか、渋柿を自分で干して作ったの?」

結月君ならやりかねない。

すると。

「あ、はい。庭に柿の木があるので、毎年渋柿が穫れるんですよ。それを干して、干し柿にしてます」

…やっぱり…!

干し柿を作れる高校生。なかなかいないわよ。

「加賀宮さ、あ、いえ…知人の家の庭にも、毎年たくさん渋柿が穫れるので、それをもらって干して…。毎年作ってます」

「相変わらず渋い趣味ね…?」

「趣味って言うか、毎年の恒例行事と言うか…」

一昔前の、おばあちゃんみたいなことしてるわね。

うちのおばあちゃんだって、干し柿は作らないわよ。

「美味しいですよ、干し柿。星さんは嫌いですか」

「嫌いじゃないけど…。もう何年も食べてないわ」

確か、何年も前…親戚の家に遊びに行ったとき、食べさせてもらったのが最後だったっけ…。

「じゃあ、久し振りに今日、食べてみてください」

そう言って、結月君はもう一個持ってきてきた干し柿を、私にくれた。

いや、ねだった訳じゃないのよ。

「どうぞ。うちにはまだたくさんあるので。遠慮なく」

「あ、ありがとう…」

もうどんな味だったかも忘れたけど。

確か、不味かった記憶はないから、食べられる…とは思う。

南無三、とばかりに私は干し柿を口にした。

…ん?

「どうですか?」

「ん…!…結構美味しい」

「それは良かった」

本音である。

久し振りに食べた割には…いや、久し振りに食べたからなのか。

意外と美味しくて、びっくりしてる。

結月君の干し加減が絶妙なのかな?

素朴な甘さが癖になりそう。

「干し柿って、美容にも良いそうですよ」

へぇ。

「じゃあ、結月君のぷるぷるもちもち肌は、干し柿のお陰なのね…」

「…何ですか?ぷるぷるもちもち肌って…」

君の肌のことよ。

「もぐもぐ…。何でも自分で作っちゃって、結月君は偉いわね」

「ただ貧乏性なだけですよ。買ってくるより、自分で作った方が安上がりで、たくさん出来るから」

だからって、毎年干し柿まで作るのは、よくやると思うわ。

何なら、梅干しとからっきょうとかも自分で漬けてそう。

「結月君って、梅干しを自分で漬けたりするの?」

「え?いや、今年は漬けませんよ。去年大量に漬けたので…」

やっぱり自分で漬けてるんじゃない。

「そういえば、おはぎを自分で握ったりもしてるのよね」

「えぇ。最近作ってないですけど…」

「今度食べてみたいなぁ。結月君のおはぎ」

そう言って、ちょっとおねだりしてみると。

「良いですよ。僕も食べたいので、今度作ってきます」

とのこと。

言ってみるもんだなぁ〜…。