星と月と恋の話

――――――…昼休み。

その日も私は、朝から頑張って、お弁当を作ってきた。

三日坊主じゃないからね。

ちゃんと、週に2回、って決めて、その日だけは早起きしてお弁当を作ってる。

と言っても、相変わらず、結月君ほど上手には出来ない。

私のお弁当箱には、不格好な卵焼きと、相変わらずエイリアンなウインナーと、あとは冷凍食品が惜しみなく入っていた。

何か悪いか。

「結月君、お昼食べよー」

昼休み。私は、ランチボックスを持って結月君のところに向かった。

「いたたた…はい…」

…ん?

「どうぞ、そこに座ってください。…いたっ」

「…どしたの?」

「え、何が?」

「なんか今日、生まれたての子鹿みたいな動きをしてるわよ」

「うっ…」

動きがぎこちないって言うか。

ロボットみたいに、カクカクしてる。

「ちょっと…筋肉痛でして…」

筋肉痛?

「って、一体何したのよ?」

「ちょっと昨日…激しい運動を…」

「ふーん…」

何したんだろう。…水泳とか?

あれって全身運動だから、結構疲れるらしいわね。

休日にスポーツなんて、結月君もよくやるわよ。

「運動するの好きよね、結月君…。今朝も、走ってきたの?」

「走りましたよ。筋肉痛が辛かったので、30分で切り上げましたけど…」

よく30分も走り続けられるわよ。

つくづく、何か運動部に入れば良いのに、と思う。

「真面目よね、結月君って…。筋肉痛のときくない、朝ランニング休めば良いのに」

「いえ、これはもう…僕の習慣って言うか…」

「…」

「…?星さん、どうかしました?」

「…結月君、それ何?」

めっちゃ、話変わるけど。

私は、結月君が片手に持っているものを指差した。

さっきまでお弁当食べてたかと思ったら。

今度は、謎の黒っぽい物体を手にしていた。

何あれ?食べ物…?

「え?干し柿ですけど…。見たことないですか?」

「あ、干し柿…」

言われてみれば。

干し柿なんて私、何年ぶりに見たかしら。

「今日のデザートなんです」

「…」

学校のお弁当のデザートに、干し柿持ってくるのは結月君くらいだと思うわ。

なんて渋い趣味。