星と月と恋の話

「何ですか、いきなり」

「…いつの間に彼女が出来たんだ…?」

あぁ、そうか。

師匠には、まだ報告してなかったんだった。

「年末に僕、色々揉めてたじゃないですか」

「泣いてたな」

そういう覚え方はしないでください。

「結局、あの人と付き合うことになったんです」

「…何がどうなって、そうなったんだ…?」

「…うーん…。上手く説明するのは難しいんですけど…」

そうだな。分かりやすく言うと…。

「許したんです、僕」

こう言うのが、一番伝わるだろう。

「許して、それから前に進むことにしました。そうしたらこうなりました」

「…成程」

分かってもらえただろうか。

一言で言うと、そういうことだな。

「それは…安心した」

「心配してくれてたんですか?」

「一応…それなりには」

それはそれは。

「心配かけましたね」

「丸く収まったのなら、良かった」

えぇ、お陰様で。

今のところは、丸く収まってます。

これから先も、何事もなく、上手く事が運べば良いんだけど。

多分それは無理だろうと思う。

星さんが、何処まで考えているのかは知らないけど。

あの人のことだから、まだ気づいてないんだろうな。

出来ることなら、一生気づかないままでいて欲しい。

いくら鈍い星さんでも、そろそろ気づく頃だと思う。

そのときのことを思うと、今から気が重いけど…。

少なくとも今は、順調だ。

「それでまぁ、ゲームセンターにデートに行ったんですが」

「世の中の若者は、そんなところで逢い引きするのか…」

「…加賀宮さんは、奥さんと何処でデートしたんですか?」

「え、それは…。うん…。…い、言わないと駄目なのか?」

何を照れてんですか。良い大人が。

「良いですよ。…奥さんに直接聞きますから」

「そ、それはやめて欲しい…」

そうですか。

じゃあまぁ、聞かないでおいてあげますよ。

武士の情けって奴です。

「なら、代わりと言っては何ですが」

「な、何をすれば良い?」

「稽古つけてください」

「…それなら、いくらでも」

それは良かった。

じゃ、今日は投げられないように頑張るとしましょう。