星と月と恋の話

誰しも、一度はやったことがあるだろう。

曲に合わせて、太鼓を叩いて点数を競うリズムゲーム。

その名も、太鼓の鉄人。

これ好きなのよ、私。

そもそも、嫌いな人っているのかしら。

しかし結月君は。

「…?これが何か凄いんですか?」

ごめん、誰しも一度はやったことある、って言ったけど。

やったことない人もいるのね。それは知らなかったわ。

結月君はレアケース過ぎると思うの。

この歳で、ゲームセンターが初めてって時点でお察しだったけど…。

「やったことないの?太鼓の鉄人」

「ないですね。見たことはありますけど…。割と何処にも置いてありますよね、この太鼓…」

良かった。見たことくらいはあるのね。

まぁ、これはかなりポピュラーなゲームだもの。

家庭用ゲームのソフトにもなってるし。

やったことがなくても、見たことくらいはあった様子。

そこらのスーパーの、ちょっとしたゲーセンコーナーにも置いてあるわよね。

見たことがある、じゃなくて。

何回かやったことならあります、って言ってくれたら良かったんだけど。

「私、このゲーム好きなのよ」

「え、そうなんですか?太鼓を叩くのが好きなんて…。星さんは、なかなか渋い趣味を持ってるんですね」

あなたにだけは言われたくなかったわ。

太鼓を叩くのが好きなんじゃない。リズムゲームが好きなのよ。

「でも、僕やったことが無いので、いまいちルールが…」

「簡単よ。ほら、赤は太鼓の真ん中、青は縁を叩くの。ドン、カッ、ってね。基本はこの二種類しか流れてこないから」

あとはリズムに合わせて、ベストなタイミングで叩くだけよ。

シンプルなゲームだから、初心者にもおすすめよね。

「さ、楽しいからやってみましょう?」

「え、あ、はい」

コインを投入して、いざゲームスタート。

さぁ、どの曲にしようかな。

曲決めがなかなか決まらず、あたふたしてる間に制限時間が来ちゃって、望まない曲が選ばれてしまうという。

太鼓の鉄人のあるあるみたいなのは、遠慮したい。

私はポップスでもアニメでも、何でも良いんだけど…。

結月君は初めてなんだから、やっぱり知ってる曲が良いわよね。

…子供の童謡とか?

いや、それはさすがに…。

ポップスはこんなに種類があるんだから、結月君だって、一つくらいは知ってる曲があるはず。

「結月君、この一覧の中で、どの曲なら知ってる?」

「えっ…。…えっと…」

「私はどれでも良いから、好きなの選んでよ」

私は大抵、どの曲でも知ってるし。

もし知らなかったとしても、難易度普通くらいまでなら、初見でノルマクリア出来るわ。

しかし。

「…済みません。ちょっとよく分からないです…」

おい。

おい。一曲も知らないのか。

結月君の世間知らず、ここに極まれり。

君ってば、本当知識が偏ってるなぁ…。

「…結月君、今度君に、メジャーなポピュラー音楽のミックスCDをプレゼントするわね」

「な、なんか済みません…」

「むしろ、どの曲なら知ってるの?」

「…何でしょうね…?」

ごめん、結月君に尋ねた私が馬鹿だったわ。

結月君に選ばせずに、私が選ぶわね。

最初からそうすれば良かった。