星と月と恋の話

クレーンゲームを楽しんだ後。

ゲームセンターの中をぶらぶらしていると、私は良いものを見つけた。

おっ、これは。

「結月君、ねぇ結月君」

「は、はい」

「プリクラ撮ろうよ、プリクラ」

折角、彼氏とゲームセンターでデートしてるんだから。

定番を満喫しないとね。

しかし、この彼氏。

「ぷ…ぷりくら…?」

プリクラをご存知でない。

男の子だから、あんまりプリクラとか撮る機会なかったんだろうけど…。

それにしても、プリクラの存在すら知らないなんて世間知らずだわね。

「ほら、あれよあれ」

私は、プリクラの機械を指差した。

「な、何なんですか?あれ…。あんな半密室に入って、何をさせられるんですか?」

そんなに身構えなくても。

「ただ写真を撮るだけよ」

「写真?ならカメラで撮れば良いのでは?」

絶対にそう言うと思ったわ。

プリクラを知らない人は、大抵そう言うのよ。

「色々デコったり、画質を明るくしたり出来るのよ」

「で、デコる…?なら、写真を撮って、油性ペンで落書きすれば、」

「はいはい、百聞は一見にしかずだから。まずやってみましょうね〜」

カメラで撮った写真に、油性ペンで落書きって。

何も楽しくないわよ、そんなの。ただの悪戯じゃない。

「うわ、何だか明るい…。あれですね、証明写真ボックスみたい」

何言ってるの。プリクラよ。

「よしっ、じゃあお金を入れて…美白モードを選択っと…」

「美白…?」

「お肌が白く見えるのよ」

「本物と詐称してるじゃないですか。そんな優良誤認詐欺みたいなことやめて、ありのままの姿を写真、いたたたた」

「はいはい、口開けてー笑ってー」

「え、もう撮るんですか!?」

もう撮るのよ。覚悟しなさい。

間抜け面してたら、そこを撮られちゃうんだからね。

フレームは…ちょっと恥ずかしいけど、ハートのリボンフレームを選択。

彼氏なんだから、これくらいアリでしょ。

いつも、真菜や海咲とプリクラを撮るときとは違う。

…って、変に緊張するのも良くないわよね。

「はい、ピース」

「え、ぴ、ぴ、」

パシャッ。

はい、撮られちゃった。

私はバッチリ笑顔で撮れたけど、結月君は挙動不審顔で、しかもピースを作り損ねて、カニさんみたいになってる。

「やーい。変な格好」

「なっ…。と、撮るなら撮るって言ってくださいよ…!」

「カウントダウンしてくれてたじゃない」

「と、撮り直しは?撮り直し」

焦ってる焦ってる。

可愛いところもあるじゃない。

でも、残念だったわね。

「これ、撮り直し機能はないプリみたいね」

「えぇぇぇ」

「その代わり、もう何枚か撮れるから。次は頑張って!」

「そ、そんないきなり言われましても…」

と言ってる間に、次のフレームを選ぶ。

星と月のフレーム。

ほら、私達、名前にそれぞれ星と月がついてるから。

「よし、二枚目撮るよー」

「ちょ、まだ心の準備が…」

パシャッ。

…結月君、目閉じちゃってる。

全くもう、こういうウブなところが堪らなく可愛いわ。