星と月と恋の話

突然の意外な人物の来訪に驚いたものの。

私は、久露花さんを止めようとした。

「あの、久露花さん?」

「はい、何でしょう」

「だ、大丈夫だから。代打ちとかしなくてだ…え…!?」

私は、後ろにいる車椅子の彼が目に入って、思わず驚愕に目を見開いた。

よく見たら、彼。

膝の上に、山のような荷物を抱えている。

車椅子の荷物かけにも、巨大な景品袋を二つもさげている。

い、一体何が入ってるの?あれ。

も、もしかしてあれは…いや、もしかしなくても。

クレーンゲームの…景品の山?

「…なんか、瑠璃華さんの…アンドロイドスイッチが入っちゃったらしい」

私の視線に気づいた車椅子の彼が、遠い目でそう言った。

あ、アンドロイドスイッチ…?

何よそれ?ただの電波ちゃんなんじゃなかったの?

「では行きます。…まず百円を入れて…」

久露花さんは私が止める間もなく、百円玉を投入していた。

あ、入れちゃった…。

「あの、久露花さん。無理しなくてい、」

「…戦闘モードに移行します」

はい?

「アームの強度を推測、ターゲットとの距離は76センチ25ミリメートル。ここから横方向、及び縦方向への距離と角度を算出します」

「え、えぇ…?」

「…出ました。まずは、横方向に2秒75」

絶妙なタイミングで、ボタンを離す久露花さん。

その目は、瞬きの一つもせず。

ただただ真剣そのものだった。

何その気迫…めっちゃ怖いんだけど…。

だけど何だろう。この、謎の頼もしさ。

「次に、縦方向に3秒4…ここです」

久露花さんは迷いない手付きで、ピタッ、と手を止めた。

ウィーン、とぬいぐるみに向けて降りていくアーム。

しかし。

「あれ…?ちょっとズレてない?」

何だか真剣な顔をしてたから、ぬいぐるみにジャストでぶっ刺さるのかと思ったら。

ちょっとズレてるよ?

これじゃあ、ぬいぐるみの下半身に触れるだけだよ。

なぁんだ、久露花さんも意外と普通…。

「いえ、これで大丈夫です」

「え?」

アームはぬいぐるみからズレてるのに、何でそんなに自信が…。

…と、思っていたら。

「あっ」

「えっ…!」

ぬいぐるみに触れたアームが、下半身をぐいっと持ち上げた。

その勢いのまま、ぬいぐるみはころんと前転し。

そのまま、獲得口にすってんころりんした。

…う。

…嘘でしょ?

私も結月君も、目が点になっていた。

車椅子の彼だけが「あー…」みたいな顔で、久露花さんを見つめていた。