星と月と恋の話

「し、仕方ないじゃないですか。僕初めてなんですから!」

「初めてにしても、何ですぐ手離しちゃったのよ!散々見てたでしょ!」

「い、いや、あれはその…。…手が震えて…」

何よ、その言い訳は。

素直に負けを認めなさい。

「私の百円玉を返しなさい!」

「そ、そんなこと言われても…。…卵が…」

まだ言ってるし。

「これで分かったでしょ?このクレーンゲーム、結構難しいんだからね!」

「だ、だったら余計、もう諦めましょうよ。何回目だと思ってるんですか」

次で十回目ね。

九回目を、見事に君が無駄にしちゃったからね。

何だか損をした気分だわ。

「次で十回目だもの。キリが悪いから、あと一回くらいやるわ」

「いや、もう無理ですって…」

「ここまで来て諦めたんじゃ、勿体ないでしょ!」

「…コンコルド効果…」

だから、それは何よ。

とにかく、私はもう一回やるからね。

新たに百円玉を入れて、アームを動かす。

ここだ!と思って、手を離してみるも。

アームをはぬいぐるみの頭を、少し掠めただけ。

ほんのちょっとだけ、獲得口に近づきはしたものの。

やはり、落っこちるにはまだまだ足りない。

むぐぐ…。

「ほら、もう無理ですよ…。ぬいぐるみが匍匐前進してるだけじゃないですか」

匍匐前進なら、少しでも前に進んでるんだから良いでしょ。

「あと少しなのに…。そのあと少しが遠いわ…」

「もう諦めましょう?ね、悪いこと言いませんから」

めちゃくちゃ逃げ腰の結月君。

悔しいから、やっぱり何としても取りたい。

…でも。

私、明らかに熱くなってるわよね?

ここまで千円分費やして。

未だに、ゲット出来るビジョンが見えていない状態。

確かにこれ以上は、結月君の言う通り無謀かも…。

…って言うか、これなら…初めからクレーンゲームで入手しようとせずに。

フリマアプリで同じものを購入した方が、安かったかも…。

うぅ、そう思うと、余計悔しい…。

あともう一回…もう一回やれば取れるんじゃないか?

って思いながら、何回やっても結局取れないのよね…。

これ、経験則。

ソシャゲーのガチャと一緒だわ。

結局結月君の言う通り、全然取れなくて悔しいけど…。

丁度千円を費やしたここが、潮時かもしれない。

…はぁ。

「分かったわよ…。さすがに、私ももう諦め…」

「…諦めるのですか」

「え?」

結月君じゃない別の人の声が、背後から聞こえて。

私と結月君は、揃って振り返った。

すると、そこにいたのは。

物凄く意外な人物だった。

嘘、この人達って…。