星と月と恋の話

「恐ろしいですね、クレーンゲーム…」

「…」

クレーンゲームに恐怖を感じてるのは、君くらいよ。

もっと気軽に楽しんで良いと思うのよ。

もし取れなかったとしても、「あ〜やっぱり駄目だった〜!」と笑い飛ばして終わりでも良いのよ。

まぁ、笑い飛ばした所で、費やした百円玉が戻ってくる訳じゃないから。

そう思うと、結月君にとっては笑い事じゃないんだろうけど。

「…あ、見て結月君、これ」

「は、はい…?」

「めっちゃ可愛くない?」

私は、とあるクレーンゲームの景品が目に入った。

猫のキャラクターのぬいぐるみだ。

このキャラクター、私好きなのよ。

以前、このキャラと、行きつけの洋服ブランドがコラボしたことがあったんだけど。

わざわざ店舗に並んでまで、コラボ商品を手に入れたくらい。

「はぁ、まぁ…可愛いですね」

反応薄いわね。

可愛いなーぬいぐるみ…。二種類あるけど、こっちの黒い方が可愛い。

「…よし」

私は意を決して、クレーンゲームの前に立った。

「えっ、星さん、あなたもしかして…」

気づいたようね?

「えぇ、私挑戦してみるわ」

「…!そんな、無謀ですよ星さん」

「何でよ?」

「あの手先が不器用な星さんが、一回で景品をゲット出来るはずないじゃないですか…!」

「…」

…あのね、そりゃあね。

私だって、クレーンゲームが特別得意な訳じゃないし。

多分一回じゃ手に入らないだろうけど。

自分でも、手先が不器用な自覚もあるけど。

でも、失礼でしょうが。

もしかしたら何かの奇跡が起こって、一回で手に入るかもしれないでしょ。

「一回で取れなくても、何回か試してみるわ」

「そ、それで取れたら良いですけど…。取れなかったらどうするんですか?」

「そのときは仕方ないじゃない。諦めるわよ」

「でも、諦めたって百円は戻ってこないんですよ?コンコルド効果で、次々に百円玉を搾取するのがクレーンゲームの悪質なやり口なんですよ?」

何よ、コンコルド効果って。

難しい言葉使って、私を止めようとしないでよ。

「しかも見てください、僕達を嘲笑うように、すぐそこに両替機がある…!これも戦略ですよね。例え財布の中の百円玉が尽きても、あんなに近くに両替機があったら、『ちょっと崩してこようかな…』という気にさせて…。…悪質…!」

…ちょっと、黙っててもらって良いかしら。

気が散るわ。

「分かったから、ちょっと黙って、そこで見ててちょうだい」

「は、はい…。無理だと思うけど、頑張ってください」

一言余計よ。

全く結月君と来たら、どれだけ私が不器用だと思ってるの。

そりゃ私は不器用だけど。

でも、クレーンゲームド素人の結月君よりは、ちょっと経験あるのよ?

「よし、じゃあ百円玉を…」

財布から取り出した百円玉を、チャリン、と小銭投入口に入れると。

沈黙していたクレーンゲームが、息を吹き返したように動き出した。

よしっ、じゃあ頑張ってみよう。