星と月と恋の話

「何だか結月君と一緒に帰るのって、久し振りね」

「そうですね」

二人で歩きながら、そんな会話を交わす。

最初の頃は会話に困ったものだけど。

今は、沈黙が続いても何とも思わないわね。

何とも居心地が良いと言うか。

本当、変わったものだ。

あれって、本当に今から四ヶ月近くも前のことなんだっけ?

なんて考えていると、不意に結月君が立ち止まった。

「…と、僕は買い物に寄って帰るので、ここで失礼します」

あぁ、もうそんなところまで来ちゃった?

よく見たら、いつも結月君と分かれる場所まで来ていた。

早いなー。

…でも。

「ちょっと待って、結月君」

「?何ですか?」

「私も一緒に買い物についていって良い?」

「え?」

迷惑だろうか?買い物くらい、一人で行きたいだろうか。

でも一応、聞いてみるだけなら。

だって私、もっと結月君のことよく知りたいんだもの。

今まで知ろうとしなかったことも、たくさん。

「ほら、私、明日もお弁当作る予定だから…。材料買っておかないと」

「あ、成程…。…えっ、まだ懲りてないんですか?」

ちょっと。それどういう意味よ。

「懲りないわよ。練習して、いつか結月君みたいなシェフになるの」

「そうですか…。…まぁ、夢を見るのは誰しも自由ですし…」

ちょっと。ますますどういう意味よ。

おへそに箸突き刺すわよ。

「分かりました。一緒に行きましょう」

「うん、行きましょ」

「あっ、でも…」

ん?

結月君は、何かを思い出したように立ち止まった。

「どうしたの?」

「今日、水曜日ですよね。水曜日の○○スーパーは…素人には危険かも知れません」

…どういうこと?

水曜日が危険なスーパーって、何?

聞いたことないんだけど。

「…通り魔でも出るの?」

「…あながち、間違ってないかもしれません」

何よ、それは。

本当に通り魔が出るなら、ニュースになってるんじゃないの?

「よく分からないけど…私は行っても良いの?やめた方が良いの?」

「あ、大丈夫です…。その、いざとなったら…守る努力をしますから」

「そこは、何があっても守る!でしょ…」

「いえ…自信のないことに、虚勢を張らない方が良いかなって…」

いかにも結月君らしいわね。

でも、その気持ちだけで充分よ。

…それにしても。

水曜日が危険って、一体どういう意味なのかしら…。




…と、思いながら、結月君御用達のスーパーマーケットにやって来ると。

結月君の言う、通り魔の意味が分かった。