星と月と恋の話

「お、おはよう、二人共…」

我ながら、笑顔が引き攣っているのを感じた。

笑顔を作るなんて久し振りだ。

この冬休みの間に、もう笑い方を忘れてしまったようだ。

しかし二人は、私のそんな引き攣った笑顔に気づかない。

「星ちゃんに会うの、なんか凄い久し振りだね」

「結局何だかんだで冬休みの間、一回も会えなかったもんね〜」

「私達は一緒に福袋買いに行ったから、年明けに会ってるんだけどね」

と、真菜と海咲が言った。

真菜と海咲は、お互い年明けに会っている。

知ってる。二人が、私にも声をかけてくれたから。

一緒に福袋買いに行こう、って。

私が断ったから、二人だけで行ってきたんだろう。

Twittersに、買ってきた福袋の写真をアップしているのも見た。

羨ましかった。

福袋がじゃないよ。勿論。

そんな風に、心を悩まされることなく過ごしていられることが羨ましかった。

私だって…三ヶ月前の私なら、二人と同じように当たり前のように笑ってたよ。

今となってはもう…とても、そんな風には笑えないけど…。

…しかし。

二人は、私の笑顔がぎこちないことに気づかない。

それどころか、容赦なく私の傷口を抉る。

「それでさ、星ちゃん。お疲れ会いつにする?」

そう聞かれて、私はドキッとした。

お疲れ会…って。

「そうそう。折角罰ゲーム終わったんだからさ、祝賀会開かなきゃ」

「パフェ奢る約束、忘れてないからね。お楽しみに〜」

…楽しみに、なんて。

出来るはずがないじゃない。

だから、ずっと理由をつけて断ってたのに。

パフェなんて…今食べたって何の味もしないよ。

「…星ちゃん?」

ずっと返事をしない、それどころか陰鬱な顔で俯いている私を見て。

ようやく、様子がおかしいと思ったのか、真菜が声をかけてきた。

「どしたの?もしかして…まだ、体調悪いの?」

体調悪いの、って…。

あ、そっか…私、インフルエンザにかかったことになってたんだけ…。

あれは仮病なんだから、体調が悪くなるはずがない。

ただ心が重いだけだ。

「ううん…大丈夫。なんか、冬休みの間に身体が鈍っちゃったのかな…」

「ふーん…?インフルエンザのせいで、体力持っていかれたのかもね」

「お大事に、星ちゃん」

「ありがとう…」

ある意味で、体力持っていかれたと言える。

でもそれは、決して仮病のインフルエンザではなく…。

「とにかく、落ち着いたら改めてお疲れ会しようよ」

「うん、楽しみにしてるから」

「…そうね…」

私は、力なくそう答えるのが精一杯だった。

…すると。

海咲が、とんでもない爆弾を投下した。

「あ、そうだ。結局、三珠クンと別れたときどうだったの?」

再び、私はドキッとした。

「あ、それ私も気になる。三珠クン泣いてた?」

「円満に別れられたの?」

…泣いてたのは、結月君じゃない。

他でもない、この私だったよ。