――――――…この、冬休みの間。

結月君は、自分の気持ちに折り合いをつけることが出来ていたけれど。

一方の私は、年が明けようが冬休みが終わろうが、全く気持ちに整理がつかないままだった。

…忘れることなんて、出来るはずがない。

この二週間近く、片時も忘れられなかった。
 
起きている間ずっと、忘れようとすればするほど、ふとした瞬間に思い出す。

あのときの、結月君の軽蔑しきった顔。

優しかったはずの結月君の…豹変した姿。

でも、彼にあんな顔をさせたのは、私なのだ。

私の愚かさと幼稚さが招いた結果なのだ。

私は、結月君のように、身近に相談出来る人はいなかった。

当たり前だ。

私は加害者なのだから、こんな情けないことを、他人に相談なんて出来ない。

「罰ゲームで付き合ってた彼氏にネタばらししたら、手酷く罵倒されて辛かったの」なんて。

情けないにも程がある。誰にも言えない。

おかしな話だ。

私は結月君よりも友達が多くて、相談出来る相手も多いはずなのに。

それなのに、誰にも相談出来ないなんて。

私を心配してくれる人が、いない訳じゃなかった。

クリスマスのあの日、仮病を使ってお疲れ会をサボタージュした翌日も。

風邪は大丈夫か、とか。熱は下がったか、とか。

お疲れ会は何日に延期するか、とか。いつなら空いてるか、とか。

私のスマートフォンには、ほとんど毎日、誰かしらからのメッセージが届いていた。

それなのに、私の心は空虚だった。

誰からEINLが来ても、逃げるような返信しか出来なかった。

むしろ、次々に届くメッセージが、煩わしいとさえ感じた。

お疲れ会なんて、それどころじゃなかった。

時には、既読無視したいと思うほどだった。

あんな風に、結月君と別れて。

自分達が、いかに馬鹿なことをしていたか思い知らされて。

その馬鹿なことをした仲間達と、馬鹿なことをした祝賀会なんて。

あまりに馬鹿らしくて、とてもじゃないけど参加出来なかった。

それ故。

結月君と別れたクリスマスイブが過ぎ、明日から三学期を迎える日になっても。

未だに、お疲れ会は開かれていなかった。

一生開かれないままで良いと思う。