星と月と恋の話

お客様三人を、まずは居間に通した。

「お茶淹れてきますね、えぇと…お嬢さんはジュースの方が良いですか?」

師匠のお嬢さんは、師匠の腕の中に抱かれていた。

なんか、去年見たときより一回り以上大きくなってる気がする。

小さい子の成長って恐ろしい。

「あぁ、いえいえ、良いのよ。お構いなく」

「お嬢さん、ジュースとココアどっちが良いですか?」

「んーとね、ココア!」

お返事頂きました。

「はい分かりました。じゃあココア持ってきますね」

こんなときの為に、用意しておいて良かった。

とはいえ相手は小さいお嬢さんなので、砂糖とミルクたっぷりめで。

大人の皆さんはお茶です。

お茶菓子は、わらび餅を作ってみたんだけど…。

「お嬢さん、わらび餅って食べられます?小さめに切ってあるんですが」

小さい子にわらび餅は渋かったかなぁと、ちょっと後悔。

つい、自分の好みで作ってしまった。

「ありがとう、食べられるから大丈夫よ」

と、奥さんは微笑んで言った。

それは何より。

じゃ、持ってきますね。

「どうぞ。お口に合えば良いんですが…」

「まぁまぁ、ありがとうね〜。結月君たら、本当によく出来た子で羨ましいわ」

「いえ、そんな…」
 
「美味しい。これ、結月君が作ったの?」

わらび餅を一口試食した奥さんが、僕にそう尋ねた。

「はい」

「確かわらび餅って、わらび餅粉で作るのよね。わらび餅粉なんて、よく手に入ったわね」

「あ、いえそれは…片栗粉で代用したものでして…」

「へぇ。片栗粉で作れるのね。よく知ってるわね」

それはまぁ…。一応、好きな食べ物だから…調べて。

「お嬢さん、美味しいですか?」

小さい子の口には合わないかな、と少し心配だったが。

お嬢さんは、口のほとりにきな粉をつけながら嬉しそうに笑った。

「うん、おいしーよ」

「そうですか。それなら良かったです」

頑張って朝から作った甲斐がある。

「結月君は偉いわね、いつも…。うちの主人の面倒も見てくれて、ありがとうごめんなさい」

と、奥さんが言ったが。

「…面倒…見られている側なのか…」

ご主人、なんかショック受けてるみたいですよ。

「だってそうでしょう?大掃除も手伝ってもらって、鏡餅まで作ってもらって。全く大の大人が情けないったら…」

「う、ぐ…ぐぬぬ…」

あの師匠も、奥さん相手には頭が上がらないらしい。

奥さんの方が、師匠より一回りも年下なのに…主従関係はまるで反対だな。

…そういえば。

「お嬢さん、クリスマスプレゼントもらいました?おままごとセット」

「うん!もらったよ」

「あれ、楽しかったですか?」

子供って残酷だからな。

つまんなかったら、無邪気な顔で「つまんなかった!」って言うだろう…と、思っていたら。

「うん!楽しいよ」

と、弾けるような笑顔で答えた。

おぉ、まさかの高評価。

「そうそう、あのおままごとセット、うちの主人が選んだにしては趣味が良いと思ってたら、結月君が選んでくれたんですってね」

「あ、はい…。困っているようだったので…。ちょっと助言しただけです」

「お陰で、うちの子大喜びなのよ。毎日あれで遊んでるの。本当にありがとうね」

まさか、そんなに気に入ってもらえたとは。

それは何よりだ。