星と月と恋の話

「許す、ですか…。簡単に言いますね。騙されていた者は、そう簡単には許せないんですよ」

人間、憎しみという感情がありますからね。

許そうと思ったって、そう簡単には許せない…。

…しかし。

「いくら時間がかかっても良い。でも…傷つけられた者が傷つけた者に与えられるものは、許し以外何もない」

「…」

「だから、お前がその相手に何かしたいと思うなら、それは許し以外にない。何かをしたいとさえ思わないなら、それでも構わない」

…難しいことを言う。

それが出来たら苦労しないって…。

「…お前は素直だし、人の痛みに敏感だからな。余計、人を傷つけたことに罪悪感を感じるんだろう」

「僕は…罪悪感なんて感じてないですよ」

「そうか?後悔しているようだったから」

後悔…してるとしたら。

それは、最初に星野さんの告白を受けてしまったことだ。

「過ぎてしまったことはどうしようもない。過去を悔いるより、これからどうするかを考えた方が、余程建設的だと思う」

「…あなたにしては、まともなことを言いますね」

「…自分は、いつもまともなことしか言っていないつもりだったんだが…」

それは意外でしたよ。

案外、自覚ないんですかね。

…とはいえ。

「…分かりました。…ありがとうございます」

「少しは元気が出たか?」

「元気が出たかは定かじゃないですが…。…誰かに話せて、スッキリしました。」

「そうか」

やっぱり、ここに来て良かった。

みっともない泣きべそを見せたのは、後悔してるけど。

でも…。

自分の…弱さを、受け入れてもらったような気がして。

今は、少し気分が良くなっていた。