星と月と恋の話

…本当に、馬鹿だったよなぁ。

星野さんほどじゃなくても、僕も馬鹿だ。

あんなことしなきゃ良かった。

例え、影で笑われていることが分かっていても。

「罰ゲームの告白なんて結構です」と、突っぱねるべきだったのだ。

三ヶ月前の自分を殴りに行きたい。

今からでも遅くないから、自分を殴ろうか?

それはそれで、虚しい気持ちになるだけだと思う。

「罰ゲームの関係だと分かっていて、三ヶ月付き合ったんです。ここに来なかったのはそういう理由です…。僕は馬鹿みたいに、彼女とのデートに付き合って…お弁当とか服とか作ってみたりして…」

そんなことは、する必要はなかったのに。

彼女が僕とデートしたいと言い出したのは、それが罰ゲームの「ノルマ」だったから。

放課後に一緒に下校したいと言ってきたのも、それが理由だ。

そんなことは分かっていた。全部、彼女の演技だった。

僕だって演技していた。それはお互い様だった。

もっとつれなく接することは出来た。どうせ本気で付き合ってる訳じゃないのだから。

デートだって、律儀に付き合う必要はなかった。

断ったって良かった。あれこれ理由をつけて。

彼女はノルマの為に、デートに誘っていただけなのだから。

それなのに、僕は断らなかった。逐一付き合っていた。

お弁当まで作って。服まで作って。何やってんだろう、本当。

そんなことまでする必要はなかったのに。

馬鹿みたいに張り切って、彼女の好物に挑戦して。

洋服が欲しい、なんて我儘を言ってきたときだって。

無視すれば良かった。笑ってスルーすれば良かった。彼女だって、本気で言っていた訳じゃないんだから。

それなのに、僕はいちいち彼女の要望に応えて。

星野さんの為に夜更しして、洋服を作って。

母にも「友達が出来た」なんて、嘘の報告をして。

連れてきて欲しいと言うから、親孝行のつもりで家にまで呼んだ。

そんなことする必要はなかった。母がいくらせがんでも、適当な理由をつけて断れば良かったのに。

自分から家に誘ったりして。

彼女の好物を作って、優しく接して。

何であんなことをしたんだろう。

菅野さん…星野さんが隆盛と呼んでいる、あの人に対しても。

菅野さんが、星野さんを好きなのだと気づいたとき。

僕は心の中で納得すると同時に、嫉妬心を覚えたのだ。

意味が分からない。

何故僕が、あんな酷い女の為に嫉妬心なんて抱く必要があるのか。

もっと冷たく接するべきだった。どうせ罰ゲームの関係なんだから。

いずれ期限が来たら、別れることになるのは分かっていた。

分かっていた癖に、そんな日は永遠に来なければ良いと思っていた…。

「…好きだったのか?本当は」

「…」

「その…罰ゲーム、とやらの関係でも…お前は相手のことが好きだったんじゃないのか」

「…馬鹿言わないでくださいよ」

僕が星野さんを好きなんて、有り得ない。

大体あの人は、ずっと僕のことを馬鹿にして…。

…それなのに。

僕の隣で、屈託なく笑う彼女の笑顔が忘れられない。

昨日の「ネタばらし」の後の、彼女の泣き顔が忘れられない。

頭の中から、彼女の姿を消すことが出来ない…。

「…好きなんかじゃない。全然…好きなんかじゃないのに…」

それなのにどうして。

こんなに、胸が苦しくなるのか。

こんなに…涙が溢れてくるのか。