星と月と恋の話

「そういう罰ゲームがあるんですよ。漫画や小説じゃあ定番なんですよ。何らかの勝負して、それに負けたらクラスで一番モテない異性に告白する、っていう罰ゲーム」

「…そんなことをして、何が楽しいんだ?」

全くですよ。

星野さんと馬鹿なお友達一向に、その台詞を聞かせてやりたい。

本当に、そんなことをして何が楽しかったんだろう?

自分も相手も傷つくだけで、何も楽しいことなんてないのに。

それが分からないんだから、やっぱり馬鹿だ。

「クラスで一番モテない異性に告白して、その反応を見て、馬鹿にするのが楽しいんです」

「…それは悪趣味だな」

「僕もそう思います」

悪趣味な人間なんだ。

最低な人間なんだ。あの人は。

「…お前、クラスで一番冴えない男子なのか?」

そこ、気になります?

何だか自尊心が傷つくから、そこは突っ込まないで欲しかったんですけど?

「そうなんですよ。残念ながら」

「何故そう思うのか分からない。お前ほど多才な人間はそういないだろうに」

って、あなたは言ってくれますけど。

クラスメイトは、そうは思ってくれない。

「僕はこれこれこういうことが出来ます!」っていうプラカードを首から下げて、生活している訳じゃありませんからね。

「学校では、僕は…自分から誰かに積極的に話しかけることはないですから。余計つまらない人間のように見えるんでしょう」

「…」

「だから、罰ゲームのターゲットに選ばれたんです。告白されたとき、すぐに分かりましたよ。これは罰ゲームなんだって」

「それなのに承諾したのか」

…しちゃったんだよなぁ。

あれは間違いだった。

「どうせ期限付きだって分かってたし、タチの悪い罰ゲームを仕掛けてきた彼女に、復讐してやりたかった」

「…」

「騙された振りをして、いつか彼女がネタばらししてきたとき、こっちも盛大にネタばらしして、お前なんかこっちから願い下げだ、って言ってやりたかったんです」

そう、そのつもりだった。

そのつもりで三ヶ月も我慢した。

好きでもない星野さんと、付き合っていた…。

しかし。

「…随分と虚しい復讐だな」

そんな僕の虚栄心は、師匠のその一言で、粉々に崩れ去った。

…全くだ。

僕はなんと、虚しい復讐に手を染めていたことか。

復讐を終えたのに、こんなにも…虚しい気持ちになるのはそのせいだ。

こんなにも虚しい復讐をしたところで、残るものは何もない。

達成感もない。残酷な満足感もない。

あるのは、ただ脳裏に焼き付いた星野さんの泣き顔と。

満たされない、空洞になった空っぽの心だけだ。