星と月と恋の話

…およそ、一時間後。

僕は稽古場の床に、それはもう雑巾のように伸びていた。

…投げてくださいって言ったら、本当に投げられたよ。

投げられまくって、ボールになった気分。

でも、その心地良い痛みが鈍った身体によく効いた。

三ヶ月サボっていたツケは、耳揃えてきちんと払わされたということで。

「はぁー…。全然勝てない。全ッ然勝てない…」

道着に着替えて、この稽古場に移動して来たのが一時間前。

三ヶ月ぶりに、いざお立ち会いとばかりに、組手を始めたのは良いものの。

それはもう、お望みとあればと言わんばかりに超投げられた。

僕も一応頑張ったんだけど。

やっぱり、相変わらずと言うべきか。

一本も取れずに、ポンポン投げられた。

間違いなく、明日は筋肉痛だな。

久し振りに来たんだから、当然と言えば当然だが。

「まだ投げるか?」

僕は肩で息をしている状態なのに、師匠は涼しい顔で、汗一つかいていない。

これが、無月院流継承者の実力か…。

いやはや、分かってはいたが全然敵わないな。

何だかんだで、ここに通い始めて10年近くになるのに。

未だにこの人は、僕にとって越えられない高い壁だ。

多分一生越えられないんじゃないか?

「もう良いです…。投げられ過ぎて背中痛いですよ…」

「お前は軽いからな。よく飛ぶ」

お手玉みたいに言わないでくださいよ。

僕は、道場の床にゆっくりと起き上がった。

はぁ、まだ天地が逆さまになってる気分。

でも、久し振りに身体を動かせてスッキリした。