星と月と恋の話

とはいえ。

それは僕の趣味であって、師匠のお嬢さんがミシンを欲しがるとは限らない。

「結局、何が一番良いんだろう…」

と、頭を悩ませる加賀宮さん。

…何だか羨ましいですね。

娘の為に、一生懸命プレゼントを考えてくれている父親が…いるってことが。

僕だったら、もうそれだけで充分喜ぶだろう。

でも、世の中の大抵の子どもにとっては、これが普通なんだろう。

…ないものねだりしても、仕方ないですよね。

「じゃあ、僕の一番のおすすめをご紹介します」

「え、そんなものがあるのか?」

「お嬢さんが気に入るかどうかは、保証出来ませんよ?」

「それでも良いから、教えてくれ」

それなりにメジャーな玩具で、ついでに教育にも良いだろう。

ということで、僕はチラシに載っている玩具を指差した。

「成程…。おままごとセットか」

「オーソドックス過ぎてつまらないですかね?」

「いや、そんなことはないと思うが…」

僕が子供だったら、欲しいかなと思って。

おままごとセット。

玩具の包丁で、玩具の野菜を切ったり。

玩具のコンロで、玩具のフライパンで調理する真似をしたり。

最近のおままごとセットなら、玩具と言えどもなかなか再現度も高いんじゃないだろうか。

「じゃあ、これにしよう」

「喜んでくれると良いですね」

「お前が選んだんだから、多分大丈夫だ」

何、その根拠のない自信。

これでもし「何これ。要らない」とか言われたら…。

…そのときは責任持って、僕が遊びますよ。おままごとセット。

冗談ですけどね。