「はい、お茶入りましたよ。…って、ケーキに煎茶は合わないかもしれないけど」
でもこの家、煎茶以外飲み物ないから。
コーヒーも紅茶も飲まないの、この人。
何ならお酒も滅多に飲まない。
「ケーキって、何のケーキなんだ?」
「今年は趣向を変えて…小豆きな粉チーズケーキです」
「…それは美味いのか?」
「さぁ。でも、僕が作ったものの中で、不味かったものってあります?」
「あまりないな」
あまりじゃなくて、全くって言ってくださいよ。
ちょっとはあったったことですか?
よし、聞かないでおこう。
「それから、ローストチキンとキッシュも持ってきたので。タッパー入れてるんで。食べてくださいね、今日」
「かたじけない。…ところで、きっしゅというのは何だ?」
「…食べてみたら分かりますよ…」
キッシュを知らないおじさん。
まぁね、普段から、自分が食べてる物の名前を知らずに生きてるから。
何なら、クマ肉とか出しても普通の顔して食べてそうな人だから。
「で、ケーキをどうぞ」
「もぐもぐ…。…美味い」
「それは良かった」
僕も、食べるのは初めてだ。
もぐもぐ。
…うん、これはイケる。
新感覚スイーツって感じ。
甘さ控えめで、きな粉が良いアクセントになってる。
星ちゃんさんに食べさせてあげたら、きっと喜んで…。
…って、僕は何を考えてるんだか。
「しかし、お前がここに来るのは久し振りだな」
きな粉チーズケーキを食べながら、師匠が言った。
…そういえば、そうだな。
この三ヶ月の間は…特に…。
「他に何か用事でもあったのか?」
「…別に、何もないですよ。…ちょっと忙しかっただけです」
「そうか」
なんてことはない。
ちょっと、気乗りしなかっただけだ。
星野さんのことは…別に関係ない…。
…。
…駄目だな。
彼女のことを忘れる為に、気を紛らす為にここに来たのに。
ここでも思い出してるんじゃあ、意味がない…。
今頃…。
今頃…罰ゲームが終了した記念に、祝杯でもあげてるんだろう。
…ちっ。
思わず舌打ちが出そうになった。
すると。
「丁度良いところに来てくれた」
と、師匠が言った。
「はい?」
「誰かに意見を聞きたかったんだ。これを」
師匠は、畳の上にだらしなく散らかしていた、何枚ものカラフルな紙をテーブルの上に乗せた。
何かと思ったら、チラシだ。
新聞に挟まれてるようなチラシ。広告。
何のチラシかと言うと、全部玩具屋さんのチラシ。
「どうしたんですか、これ」
「娘にクリスマスプレゼントをねだられてるんだが、何を買えば良いのか分からない。最近の子供は何を欲しがるのか、子供の意見を聞かせて欲しい」
…色んな意味で、びっくりですよ。
でもこの家、煎茶以外飲み物ないから。
コーヒーも紅茶も飲まないの、この人。
何ならお酒も滅多に飲まない。
「ケーキって、何のケーキなんだ?」
「今年は趣向を変えて…小豆きな粉チーズケーキです」
「…それは美味いのか?」
「さぁ。でも、僕が作ったものの中で、不味かったものってあります?」
「あまりないな」
あまりじゃなくて、全くって言ってくださいよ。
ちょっとはあったったことですか?
よし、聞かないでおこう。
「それから、ローストチキンとキッシュも持ってきたので。タッパー入れてるんで。食べてくださいね、今日」
「かたじけない。…ところで、きっしゅというのは何だ?」
「…食べてみたら分かりますよ…」
キッシュを知らないおじさん。
まぁね、普段から、自分が食べてる物の名前を知らずに生きてるから。
何なら、クマ肉とか出しても普通の顔して食べてそうな人だから。
「で、ケーキをどうぞ」
「もぐもぐ…。…美味い」
「それは良かった」
僕も、食べるのは初めてだ。
もぐもぐ。
…うん、これはイケる。
新感覚スイーツって感じ。
甘さ控えめで、きな粉が良いアクセントになってる。
星ちゃんさんに食べさせてあげたら、きっと喜んで…。
…って、僕は何を考えてるんだか。
「しかし、お前がここに来るのは久し振りだな」
きな粉チーズケーキを食べながら、師匠が言った。
…そういえば、そうだな。
この三ヶ月の間は…特に…。
「他に何か用事でもあったのか?」
「…別に、何もないですよ。…ちょっと忙しかっただけです」
「そうか」
なんてことはない。
ちょっと、気乗りしなかっただけだ。
星野さんのことは…別に関係ない…。
…。
…駄目だな。
彼女のことを忘れる為に、気を紛らす為にここに来たのに。
ここでも思い出してるんじゃあ、意味がない…。
今頃…。
今頃…罰ゲームが終了した記念に、祝杯でもあげてるんだろう。
…ちっ。
思わず舌打ちが出そうになった。
すると。
「丁度良いところに来てくれた」
と、師匠が言った。
「はい?」
「誰かに意見を聞きたかったんだ。これを」
師匠は、畳の上にだらしなく散らかしていた、何枚ものカラフルな紙をテーブルの上に乗せた。
何かと思ったら、チラシだ。
新聞に挟まれてるようなチラシ。広告。
何のチラシかと言うと、全部玩具屋さんのチラシ。
「どうしたんですか、これ」
「娘にクリスマスプレゼントをねだられてるんだが、何を買えば良いのか分からない。最近の子供は何を欲しがるのか、子供の意見を聞かせて欲しい」
…色んな意味で、びっくりですよ。


