――――――…星ちゃんさんを、自宅近くまで送ってから。

自分の家に帰ってきた。

我ながら今日は、大盤振る舞いだったと思うよ。

星ちゃんさんも満足そうな顔をしていた。

これで、母も気が済んだことだろう…。

そう思いながら、僕は母に声をかけに行った。

「母さん、ただいま」

「お帰り。…星野さん、ちゃんと送ってあげた?」

「うん」

それなら良かったとばかりに、母は満足そうに頷いた。

さて、これでこの話は終わり。

そろそろ夕食の支度を始めよう…と。

そう思ったら。

母は、びっくりするようなことを言った。

「ねぇ、結月が友達だって言うから、友達で通したけど」

「?」

「あの星野さんって、もしかして、結月の彼女なの?」

母の、この好奇心に満ちた顔。

そして、突然のこの質問に、僕は吹き出してしまいそうになった。

危ないところだった。

「まさか…。ただの友達だよ…」

そういうことにしておいてくれ。

事実はどうあれ。

「そうなの?彼女かと思ったのに…」

「違う、違うから」

「じゃ、これからね」

何が?

これから何が起きるって?

何が起きたとしても、母には知られたくないんだよ…。

「星野さん、凄く良い子だったわね」

「…」

「友達にしても、彼女にしても…。あの子のこと、大切にしてあげなきゃ駄目よ」

「…分かってるよ」

僕は微笑んで頷いた。

…母を、喜ばせる為だけに。

「さぁ、夕食作ってくるから、ちょっと待ってて」

「はいはい」

嬉しそうな母を前に、僕はそれ以上のことは何も言わず。

話を逸らして、台所に逃げ…ようとしたら。

「また連れてきてね、あの子」

…。

…折角話を逸らしたのに、全然逸れてなかった。

「分かった。折を見て、また誘うよ」

母を喜ばせる為に、僕は頷いたけど。

そんな日は多分来ない。

僕が、星ちゃんさんを家に連れてくるなんて…これが最初で最後だ。

きっとね。