星と月と恋の話

「…」

「…どうやったら、そんなことになったんですか?それ…」

結月君は、私のまな板の上のぶつ切り玉ねぎを見て、一言そう言った。

やめて。傷つくでしょ。

「闇雲に小さく切れば良い訳ではなく…あ、でも食感を残したいなら、そのサイズでもアリですけど」

「…そういう苦しいフォローはしなくて良いのよ…」

余計惨めになるからね。

「と、とりあえず、切ってしまったものは仕方ないので、そこから地道に小さく刻んでいくしかないかと…」

「そうね…」

地道に切るわよ。

ようは、最終的に微塵切りになってれば良いんでしょ?

そう思って、私は急いで包丁を動かし始めたけど。

刻み始めて一分足らずで、玉ねぎ特有のアレが来た。

「いたた…。目に滲みる〜…」

涙が出てきちゃった。

思わず、ゴシゴシと目を擦ってしまったが。

結月君は、気にせず玉ねぎを刻み続けている。

凄い。

「結月君、目痛くないの?やっぱり眼鏡ガードがあるから?」

眼鏡をかけてたら、玉ねぎで目が痛くなることもないのかしら。

それは羨ましい。

と、思ったけれど。

「え?いや、眼鏡をかけてても痛いですけど…」

そうなの?

「でも、慣れてるんで大丈夫です」

成程、これも熟練の差なのか…。

「昨日も家で、玉ねぎの微塵切りしましたしね」

そっか。結月君の家は昨日、コロッケだったのよね。

結月君が作ったなら、きっと美味しかったんだろうなぁ。

玉ねぎの微塵切りくらいでオタオタしている私とは大違い。

あー、目に滲みる。

しかも、更に悪いことに。

「ちょっとー星ちゃん。まな板貸して、まな板。私も材料切らなきゃ」

「俺達も、まな板と包丁必要なんだけど」

限られた調理器具を巡って、他のメンバーと取り合いが勃発。

豚汁係の真菜と、ポテトサラダ係の二人も、まな板と包丁を必要としている。

私がモタモタしていたら、彼らを待たせることになる。

「あ、はいすぐ替わります…。星ちゃんさん、それこっちにください」

と、結月君は私のまな板の上の、荒いにも程がある玉ねぎの微塵切りを指差した。

え?

「あとは僕が刻むので、そっちのまな板と包丁を回してあげてください」

あぁ…そういうことね。

要約すると、

「お前にやらせてると、いつまでたっても終わらなくて他のメンバーにも迷惑だから。さっさとこっちに回せ」って、そういうことね。

仰る通り。ごもっとも。

玉ねぎを前に、早くも降参した私は。

色んな意味で、泣く泣く、刻みかけの玉ねぎを結月君のまな板に移した。

あんなに荒い微塵切りだったのに。

結月君の手にかかると、ものの数分で細かい微塵切りに早変わり。

玉ねぎすらまともに切れない私って、一体。