星と月と恋の話

家庭科室にて。

「じゃ、皆事前に決めた担当で、レシピ通りに宜しく」

エプロン姿の隆盛がそう言った。

隆盛…あんた、エプロン似合わないわね。

正樹なんて、もっと似合わないけど。

かく言う私も、多分全然似合ってない。

その点、結月君を見てご覧なさい。

一人だけ、貫禄を感じるエプロン姿をしてるわ。 

オーラがね、オーラが違うのよ。やっぱり。

普段から料理を作る人のエプロン姿と、調理実習の為だけに、タンスの隅からしわくちゃのエプロンを引っ張り出してきた私達のエプロン姿とは。

もう、天と地ほどの差。

さすがシェフ。

安心感が段違いね。

しかも私は、そんなシェフとペアでハンバーグ作りなのよ。

ますます安心感しか感じない。

まるで実家のような安心感。

こうして、いざ調理実習が始まった。

各々レシピを見ながら、冷蔵庫から材料を取り出し始めた。

よし、じゃあ私達も。

「頑張りましょうね、結月君」

「そうですね」

私も結月君に任せっきりにしてないで、ちゃんと役に立たなきゃ。

昨日の買い物の時点で、足引っ張りまくってたんだから。

ちょっとは挽回しないと。

「えぇと、それじゃあレシピを見て…。まずは、」

「玉ねぎの微塵切りですよね」

「…はい…」

レシピを見ずとも、さっさと冷蔵庫から玉ねぎを取り出している結月君。

早い早い。

「6人分ですから、結構多いですね」

「私も手伝うわ」

「…大丈夫ですか?手、切らないでくださいね」

完全に、子供の初めての料理のお手伝いを見守るお母さんの目。

「だ、大丈夫よ」

そんなお子様じゃないんだから。

微塵切りって、要するに、小さく細かく刻めば良いんでしょ?

私にだって出来るわ。

まずは皮を剥いて、それから頭と根っこを切り落として…。

半分に切って、それからまた半分に切って、これも半分に切って…を繰り返し。

充分に薄くなってきたら、包丁をトントンして、少しずつ微塵切りにしていく。

ほら、簡単じゃな、

「え?」

隣の結月君のまな板を見て、私は硬直した。

結月君は、私とは違う微塵切りの仕方をしていた。

半分に切った玉ねぎに、細かく縦に切込みを入れ。

それを横にして、ザクザクとリズミカルに刻んでいる。

凄い。あっという間に微塵切りが出来てる。

何、その熟練の微塵切り。

「は、早い…。何、そのやり方…」

「え?他にどうやって微塵切りするんですか?」

「…」

…何て言えば良いの?私は。