星と月と恋の話

さて、野菜売り場を後にしてから。

次はお魚とお肉のコーナー。

私は、お魚を買う必要はないけど…。

「あ、鯛のアラを売ってる」

結月君が、魚売り場で足を止めた。

アラ?

って言うと、確か…。

「…うぇ」

目玉がついたままの鯛の頭と、中途半端にぶつ切りにされた鯛の身が、パック詰めにされていた。

激安特価、ってラベルには書いてあるけども。

どうするの?あれ。
 
やっぱり、ちゃんと切り身になってる鯛の方が美味し、

「よし、買おう」

「え、結月君それ買うの?」

鯛のアラに手を伸ばす結月君である。

「星ちゃんさんは、魚のアラ嫌いですか?」

「嫌いって言うか…。食べたことないんだけど…どうやって食べるの?」

悪いけど、捨てるところにしか見えないよ。

なんて言ったら、お魚好きにシバかれそう。

「アラ煮にしたり、そのまま塩焼きにしたり…。うちでは、大抵アラ汁にしますけど」

汁ってことは、スープにするのか。

「良い出汁が出て美味しいですよ」

「へぇ〜…」

そんなスープ、うちでは出てきたことないなぁ。

凄く食べにくそうだけど、大丈夫なのかな。

「僕も母も好物なんですが、魚のアラって、いつも売ってる訳じゃないので…。売ってるときに買っておいて冷凍しておくんです」

これまた、生活の知恵だね。

いそいそと、鯛のアラをかごに入れる結月君。

なんか、心なしか嬉しそう。

そんなに好きなのか。魚のアラ。

それほど美味しいものなら、私も食わず嫌いしてないで、いつか挑戦してみようかな。

それでなくても、私、お魚あんまり好きじゃないからって敬遠してたから。

でも、結月君が真剣な顔で、お魚とお見合いしてるのを見ると。

食わず嫌いは良くないな、と思った。

「済みません、時間取らせましたね」

パック詰めのお魚を吟味していた結月君が、こちらに戻ってきた。

お帰りー。

「良いのよ。お肉買いに行きましょ」

「はい」

改めて、ここでメモを確認。

えぇと、ハンバーグで使うひき肉と、豚汁に入れる豚肉が必要なのよね。

「ひき肉ひき肉…あ、これか」

「僕も、ひき肉買わないと…」

あ、そうか。

今日結月君の家、コロッケなんだもんね。

「あ、2割引がありますね。これにしよう…」

買い物上手だ。

「この時間になると、割引シールが貼られるんですよ」

という豆知識まで披露。

そっか、夕方だもんね。

「私も2割引のにしようかな?」

「いえ、調理実習で使う材料ですから…。万が一ってこともありますし、少しでも新鮮な方を選んだ方が良いのでは…」

「そっかー…。私は、なかなか買い物上手にはなれないなぁ」

結局、私は定価で買うのか。

まぁ材料費は、後で家庭科の先生にレシートを持っていって、返してもらうから。

2割引だろうと定価だろうと、私の懐が傷まないことに変わりはないんだけど。

「あとは…豚肉、っと…これかな」

私は、パックに詰められた豚肉を手に取った。

料理なんてからっきしの私でも、さすがに牛肉と豚肉と鶏肉の区別はつくわよ。

…しかし。

「星ちゃんさん、それ小間切れですよ」

「へ?」

豚肉の、部位までは知らなかった。